【医師監修】内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チ ームの一員として、1987 年、島根県での体外受 精による初めての赤ちゃん誕生に携わる。1997 年に内田クリニック開業。1 階は奥様が副院長を 務める内科・胃腸科、2 階が婦人科。昨年の秋か ら年末にかけて電子カルテを導入。端末数を増や すことで、「診察中だけでなく、安静室でも患者さ んとカルテの情報を共有できるのがいいですね」 と先生。インターネット予約も検討中とのこと。
アキさん(33歳) Q.4年の間にタイミング療法10カ月、人工授精8回を試みま したが残念な結果に終わり、勇気を出して体外受精に挑戦。 しかし採卵でOHSSぎみになり、27個も採れてしまいました。 結果、3日目でG2が2 個、G4が2 個、5日目で4CCが 1個、グレードなしが1個、反応が遅いのが1個。その他 はフラグメントが多いので対象外でした。10 細胞期胚、G2 を戻しましたが妊娠せず、現在は2回目の体外受精に向け て休憩中です。最近、自己排卵ができなくなってきたと医師 から言われました。妊娠に至らない原因は何でしょうか?
PCOの疑い??
1回目の体外受精がうまくいかなかったそうですが、その原因はどこにあったと考えられますか?
内田先生 この時の体外受精の排卵誘発法はおそらくロング法で、アキさんが通われている病院のスタンダードな体外受精のすすめ方だと思います。
アキさんの場合は、採卵数が 27 個もあったけれど、その中にいい卵子が育っていなかったと考えられます。
また、質問には自己排卵ができなくなったとありますが、 27 個という数字や月経周期が 40 日ということからも、もともとPCOであり、その状態が顕著になってきているせいではないでしょうか。
排卵誘発法の選択
今後、治療を進めるポイントは何でしょうか?
内田先生 まずは、排卵誘発法を変えることがスタートになると思います。
ヒューナーテストの結果が悪かったことから人工授精へ、そして次の段階として体外受精に移行したことも間違いではないと思います。
しかし、1回目の体外受精でたくさん卵子が採れたのに、いい卵子がなかった。
そうすると、2回目の排卵誘発法をどのように考えていくか、ですね。
担当医と方向性を共有
担当の先生に、どのように相談したらいいですか?
内田先生 アキさんは受精卵ができるというベースがあるので、排卵誘発でいかにいい卵子を育てていくかがポイントです。
今回した排卵誘発法と同じ方法ですと、同じ進み方にしかならないと思うので、そこを変えていくことが必要だと思います。
ですから、まずアキさんが先生に、「次のプランは、どこをどのように変えて進めていくことになるでしょうか」と、聞いてみるといいですね。
体外受精を行うことで見えてきた問題点を、担当医と共有しながら次に繋げていく感覚を持つことは、とても大切だと思います。
アンタゴニスト法から始めてみる
内田先生なら、どのような治療計画を考えますか?
内田先生 内田クリニックのスタンダードな方法は、今、アンタゴニスト法が基本です。
PCOの患者さんはアンタゴニスト法だと、クロミフェン、FSHの自己注射、アンタゴニストという組み合わせができます。
クロミフェンが効いていると卵子を限定でき、OHSSも少なくなるので、その方法をご提案する場合もあります。
僕の考える体外受精のプランでは、卵子の数ではなく、いかに妊娠に繋がるいい卵子が育つかを重視しています。
典型的なPCOでしたら、未成熟卵を採取して体外で培養するIVM法も選択肢としてはあるのかもしれません。
でも、アキさんは排卵誘発剤の反応が期待できるので、いい卵子が育つ周期はあるはずです。
治療周期の排卵誘発法を検討して体外受精をすれば妊娠の可能性は十分にあると思いますよ。