ナイーブな男性を決して追い詰めない

田村秀子先生の 心の 玉手箱Vol.13

奥様からご主人に切り出しにくい 男性不妊の治療。 どのように受診をすすめたらいい? 今回は、女性にはわかりにくい 男性のフクザツな心理について 田村先生が教えてくださいました。

ぽかぽかさん(医療系・30歳)Q. 不妊治療3年、今までタイミング療法と人工 授精を試み、2度自然妊娠するも、流産。 男性不妊で顕微授精適応と言われています。 医師に泌尿器科受診をすすめられていますが、 主人は拒んでいます。今まで私なりにいろいろ 試みて頑張ってきましたが、ここにきて、 なぜ主人は努力してくれないのだろうと 何だかやるせない気持ちになっています。 ご主人に原因がある方はどうしていますか? デリケートな部分なので 主人をあまり追い詰めたくありません。 でも、ステップアップ前に受診をすれば より可能性が出てくるのではと。 主人はリセットして落ち込む私にも優しくして くれるし、協力的だとは思うのですが、 「多忙で余裕がないし追い詰められる」 と言っています。

なぜ男性にも 受診が必要なのかを 説明してあげてほしい

男性にとって、精子に関することは、女性が考える以上に大問題です。
男性は、精液検査で精子が見つからない、あるいは少ないと言われただけで、男の威信を否定されてしまったような気がする方が多いものです。
精子数が完全にゼロではないけれど、実際には、1000万〜3000万個/ mL くらいの数値で、運動率が低く、人工授精には足りないが、体外受精なら治療を進められる……というようなケースもよくあります。
そういう時に「泌尿器科を受診してみますか?」ということになるのですが、女性が生理不順などで婦人科に行くことよりも、男性にとって泌尿器科に行くということは明らかにハードルが高いものです。
また、そこで受診しても、根本的な治療法がないことも多いのです。
泌尿器科に行って、どこをどう改善できる可能性があるのか、理論的に説明すれば、ご主人もある程度理解してくれ
ると思いますが、「とにかく行って」という言い方では、「嫌だ」という反応になりますよね。
特にぽかぽかさんの場合は、自然妊娠された経験があるわけですから、「とりあえず行ってみて」という言い方では、ご主人もきっと「あえて行かなくてもいいのでは?」と思うでしょう。
だから、たとえば「もしも精索静脈瘤だったらこういう手術方法があって、ここが改善する可能性があるから」などと説明してあげられるといいと思います。
ある程度のことを示せば、ご主人も考えてくれるはずです。
説明して、その後は忘れたような顔をして、ご主人を1カ月ほど待ってあげればいいのです。
それでも行かないというのなら……あえて無理強いすることはないのでは?
精子が1個でもあれば、顕微授精でいくらでも妊娠の可能性はあるわけですし。
私が気になるのは、ご主人が泌尿器科を受診しないことを、ぽかぽかさんが大きな障害と考えてしまって、そこを通過しなければ顕微授精に進めないと思い込んでしまっていることです。
もしかしたら、ご自身もまだ顕微授精に進む決心がついていないのではないでしょうか?
泌尿器科に行く理由を、ぽかぽかさん自身もよく理解したうえでご主人にすすめたほうがいいですし、それでご主人がどうするかということは、時間をかけて決めてもらえばいいと思います。

「優しくて協力的」なら それ以上は 望みすぎかも

もし、男性が女性と同じように、不妊治療に100%、力を傾けていると思っているとしたら、それは大きな間違いです。
女性は本能、男性は理性の部分で「子どもが欲しい」と思うもの。
そもそもスタートが違います。
本能=感性だから、男性に「あなたはどれくらい子どもが欲しいと思っているの!」なんて問いを投げかけても無駄です。
前述したようにそこはきちんと理論的に説明してあげるのがいいでしょう。
ぽかぽかさんのご主人の場合、精液検査には応じてくれているわけですよね。
でも、男性の中にはそれすら拒む人もいます。
ぽかぽかさんの投稿文にも「優しくしてくれるし、協力的だと思う」とありますね。
私もご主人は十分に協力的だと思いますし、「追い詰められる」という気持ちもよくわかります。
たとえば、今日、ご主人の仕事がたまたま 17 時に終わったとします。
「じゃあ、今日は夜の診療があるから泌尿器科に行ってくれない?」と、奥さんがここぞとばかりにお願いする。
でもご主人にしてみれば、「今日は久しぶりに早く帰れるから、泌尿器科に行くくらいだったら同僚と飲みに行きたいよ」と思うかもしれない。
明日からの仕事を頑張るパワーをつけるためには、ご主人にとっては病院より、飲みに行くことが大切と思うのは、働いている男性として普通の感覚だと思います。
だから、あまり追い詰めないであげてほしい。
それこそ、気持ちがどんどん追い詰められて、ご主人がEDにでもなってしまうことのほうがもっと怖いです。
男性は結構ナイーブですから。
「協力的」なご主人の態度は、わからないことを理解して、ついて行こうとしてくれていることにも表れていますよね。
その努力は買うべきですし、そんな人に「なぜ受診してくれないのよ」と言うのは、さらに追い詰めすぎかなという気がします。
そしてその努力は、奥さんのことが大事だからこそしてくれていること。
ご主人に感謝して、気持ちにゆとりを持たせてあげてください。

秀子の格言

本当はナイーブな男性を 決して追い詰めないで。 理論的に説明したら ご主人の気持ちを尊重し、 待ちましょう
田村秀子先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十 字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産 したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、 1995 年に不妊部門の現クリニックを開設。繊細な感性を 秘めた、おおらかな人柄が魅力の先生は、A 型・みずがめ座。 前回に引き続き、女性にとっては少し不可解な男性の心理 を解き明かしてくださいました。先生自身は今年、めでたく 結婚 25 周年の銀婚式を迎えられたそう。25 年前の結婚 式当日も、病院勤務の後に、式場のホテルへ直行されたの だとか! 先生らしいエピソードです。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。