子宮奇形でAMHは0.8ng/mL、2回の顕微授精も分割停止。少し休んだほうがいいですか?

生田 克夫 先生  名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室 助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不 妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教育者の 立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986 年から体外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多 くの患者さんを妊娠に導く。最近は、患者さんの間でマルチビタミ ンやイソフラボンなどのサプリメントも話題。「卵巣の中の血流を よくして、十分な栄養や酸素を補給し、また活性酸素などを除去 するようにもっていくことが大事」と語る。
ふうさん(32歳)Q.AMHが0.8ng/mLしかないこと、男性不妊であること、さらにMRI検査の結果、 双角子宮も判明し、流産リスクが高くなることなどから顕微授精をすすめられ、 今までに2回挑戦しました。ともにショート法での採卵で、1回目は昨年の11 月に4個採卵して1個受精、胚盤胞まで待って移植。2回目は今年1月に7個 採卵して3個受精、すべて分割停止。早発閉経が頭にちらついて、なんとかし たいと気持ちばかりが焦ってしまいますが、少し治療を休んだほうがいいのか、 次に進むべきか迷っています。質のいい卵子をつくるために、少しでもできること があればご指導ください。

子宮奇形は確認を

ふうさんの現在の治療状況を見て、先生はどう思われますか?
生田先生 まず、AMHが 0.8ng / mLというのはかなり低めですが、ふうさんは4個とか7個という数の卵子が採れていますので、このAMH値の数字ほど卵巣機能が低下しているかどうかは、少し疑問を感じます。
また双角子宮も、どの程度かにもよります。
左右の差がかなりあるとか、腔がかなり狭いのでなければ、双角子宮でも妊娠している方は結構いらっしゃいます。
MRIをしているので間違いはないと思いますが、もしも不全中隔子宮というものでしたら、開腹せずに行える子宮鏡下手術で腔を広げることは可能です。
子宮奇形については、そのあたりをもう一度確認してもいいかもしれません。

分割停止のメカニズム

受精卵の分割が止まってしまう原因についてはいかがですか?
生田先生 受精卵がうまく育たなかったということですが、1回目では発育停止は起こっていないので、今回回収された卵子自体がベストの状態のものではなかったと考えられます。
受精卵が主として自身の遺伝子を読んで動き出すのは4細胞期以降と考えられ、それ以前は、主に排卵前に詰め込まれた遺伝情報や物質を元に発育します。
宇宙ロケットにたとえると、ロケットは発射台でエネルギーなどをフル充電し、そのエネルギーで大気圏外に送り出してもらいます。
そしてその後は、ロケットの一番上の部分が自分の力を使って飛んでいきます。
これと同じように、4細胞期あたりから胚自身の遺伝子が主として働き、発育をコントロールするようになります。
排卵前の卵子は、周りを取り囲む顆粒膜細胞を通して必要なものを詰め込んでもらい、充電しているのです。
この時に顆粒膜の増殖・発育が悪いとか、卵胞内の環境が十分に整わないなどの問題が起きていると、排卵後の卵子の中の細胞質の状態も良好でなく、受精後の発育停止が起こりますし、卵子の減数分裂での異常によっても発育停止が起こります。
ですから、卵子の発育過程での卵巣環境を整える治療を行うことも大切かもしれません。

刺激法はしっかり選ぶ

他に、いい卵子をつくるためにできることはありますか?
生田先生 卵巣刺激法は2回ともショート法を行っていますが、この方法が合っていない可能性もあります。
採卵数を確保したいからといって刺激を強くすると、逆に卵子の質が悪くなってしまう場合もあります。
採れる卵子の数は若干少なくなるかもしれませんが、刺激の程度を軽くしてみる。クロミッドⓇとHMG製剤かアロマターゼインヒビターとHMG製剤、もしくはHMG製剤もなしでクロミッドⓇ単独、ないしはアロマターゼインヒビター単独、などの方法で刺激をして採卵してみるのも1つの方法だと思います。
まったくの自然周期で採卵するという方法もありますが、この場合、卵子は1個しか採れないので、ちょっと冒険かなという気がします。
それと、あえて長く治療を休む必要はないと思います。
本当に卵子数が少ないのであれば、卵子はどんどん減っていってしまいますから、むしろおすすめはできません。
※双角子宮:子宮奇形の1つ。子宮底部が子宮内腔にくぼみ、子宮の外観はハート形をしている。子宮内腔が筋性の子宮壁によって左右に分かれている。
※不全中隔子宮:子宮奇形の1つ。 子宮底部、外観ともにほぼ正常だが、線維性の隔壁により2つの子宮内腔を持つもので、子宮内腔の一部が中隔で隔てられている。
※アロマターゼインヒビター(アロマターゼ阻害薬):エストロゲンの生成を 阻害することを利用して排卵を誘発する。本来は閉経後の乳がんの治療薬である。レトロゾール(フェマーラ ®)、アナストロゾール(アリミデックス ®)など薬剤がある。

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