海外では禁止されている夫リンパ球移植治療。その安全性や効果は?

流産予防のための治療の1つである「夫リンパ球移植」。 効果や副作用などのリスクについて 秋山レディースクリニックの秋山先生にお聞きしました。

秋山 芳晃 先生 東京慈恵会医科大学卒業。東京慈 恵会医科大学附属病院、国立大 蔵病院に勤務後、父親が営んでい た産科医院を継ぎ、不妊専門病院 として新たに開業。O型・やぎ座。 地震などに備え、建物補強も兼ね て、外壁や病室をリフォーム中。 夏前には完成して、より快適に患 者さんをお迎えできる環境に。
犬大好きさん(34歳)Q.着床障害の検査をしたところ、血液凝固異常と同種免疫異常が見つかり、血液 をサラサラにするバイアスピリンⓇの服用と夫リンパ球移植をしました。何も気 にせずにリンパ球移植をしましたが、これは海外では禁止されているのですね。 治療を受けている病院は有名で、遠方から通っている人もいるくらいですが、ネッ トで調べているうちに危険なのではと不安になってきました。 「今は夫リンパ球移植よりもピシバニール療法のほうがいい」という情報もあり ましたが、どちらがいいのでしょうか?

夫リンパ球移植?

犬大好きさんが受けられた「夫リンパ球移植」とは?
秋山先生 夫リンパ球移植は免疫療法の1つで、原因不明の習慣流産患者に対して 30 年ほど前から行われ始め、以前は日本でも盛んに行われていました。
これは腎臓などの臓器移植を受ける際に、提供者の血液を事前に輸血することにより、移植後の拒絶反応が軽減できたという経験に基づいた療法で、胎児を移植臓器に見立て、事前に夫の血液細胞(リンパ球という白血球の一種)を妻に移植しておくことで、拒絶反応(流産)を予防しようという考えです。
流産をくり返してしまう患者さんのなかには、妊娠初期に本来備わっているべき赤ちゃんを守るという免疫の機能が欠如している方(同種免疫異常)がいらっしゃいます。
そのような患者さんに事前にご主人のリンパ球を移植しておくことで、免疫の機能が活性化され、流産を防止することができるという論理なのです。
この療法は現在、海外では行われていないということですが。
秋山先生 世界的に長年行われてきた療法ですが、その作用のしくみや有効性が十分にわかっていませんでした。
1991年以降、有効性を否定する発表が相次いだことにより、2001年、米国FDA(アメリカ食品医薬品局)では「夫リンパ球による免疫療法は、その有効性と安全性が確認されるまで行われるべきではない」という勧告を出しました。

副作用への学会対応

副作用もあるのですか?
秋山先生 重篤な拒絶反応や妊娠の継続に不利な自己抗体が産生されてしまう副作用が起こるリスクもゼロではありませんが、日本の学会では治療方針決定の際に必ず自己抗体を調べ、自己抗体のない症例にのみ行うことや、拒絶反応を防ぐためにリンパ球移植の前に放射線照射をするなどの治療指針を設定しています。
国内では一部の施設で行われている治療ですが、この指針にのっとって行われていれば安全面での心配はほとんどないと思われます。

ピシバニール療法??

ピシバニールⓇ療法のほうがよいという情報もあるようですが。
秋山先生 ピシバニールは、がん治療の際、免疫を活性化させるために使われる薬です。
不育症では、夫リンパ球移植と同様の効果を得られるのではないかという考えで行われています。
リンパ球移植と異なる点は、輸血ではないので、副作用がほとんどないということです。
ただし、現状ではこの療法も確実な有効性が認められていません。
では、どちらの療法を選んだらいいのでしょうか。
秋山先生 夫リンパ球移植もすべてのケースで有効とは言えませんが、なかにはいい反応を示す方もいらっしゃいます。
犬大好きさんの担当の先生も経験上、効果と安全性を考慮してすすめたのだと思うので、このまま信頼して治療を続けてもいいのではないでしょうか。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。