ドクターアドバイス
卵子の質を上げることが 着床率アップのカギ。 排卵誘発法の見極めが 重要になってきます
着床率を上げるには
伊藤先生は、着床率を上げるための一番のポイントはどんなことだと考えていらっしゃいますか。
伊藤先生 やはり、卵子の質を上げることではないでしょうか。
そのためには排卵誘発をすることが必要だと思っています。
排卵誘発はその方に合った方法があると思うので、いつまでも同じやり方で続けるのではなく、結果が悪ければどんどん変えていくようにしています。
当院では、基本的にはロング法で行っていますが、それでいい卵子ができず、ショート法に変えてみたらすぐ妊娠した、というケースもあります。
なかにはアンタゴニスト法が非常に合うという方もいらっしゃるので、その見極めが重要だと思いますね。
着床するための胚移植
移植についてはどうでしょうか。
伊藤先生 初期胚で戻すより、胚盤胞で戻したほうが着床率が高いので、なるべく胚盤胞まで持っていける状況にしています。
なかなか胚盤胞まで至らないという人には、血流を改善して卵子の質を上げるためにEPAやDHEAなどのサプリメントを試してもらっています。
さらに、「胚盤胞を凍結して戻す」という方法をとれば、妊娠率も上がります。
当院では、いい受精卵の状態で何回か戻しても結果が出ないという方に関しては、子宮内膜の状態にかかわらず、1回凍結して戻すという方法も考えています。
新鮮胚?凍結胚?
新鮮胚で戻す場合とかなり妊娠率に違いがあるのですか?
伊藤先生 10 %以上違うでしょうか。
凍結保存・融解胚移植した場合、50 %近い妊娠率になるというデータが出ています。
凍結すると子宮内膜の状態と同期化できるうえ、ホルモン環境もベストに整えることができるので、妊娠率が上がるのだと思います。
子宮内膜は厚く
子宮内膜は、移植時、どのような状態が理想的なのでしょうか。
伊藤先生 「いい受精卵を戻せば、子宮内膜の厚さは関係ない」という考え方もあるようですが、僕の臨床での印象は、内膜の厚さが8㎜以上ある状態で戻したほうが妊娠率がいいように思われます。
着床率を上げるためには卵子の質がポイントと申しましたが、受け入れる側の子宮内膜の条件も重要で、どちらも欠けてはいけない要素だと思います。
子宮内膜が厚くならない場合は、どのような方法をとりますか?
伊藤先生 エストロゲンの量をかなり増やして、ホルモン補充周期を選択することが多いですね。
子宮内の環境をできるだけよくして戻す方法をとっています。
薬やサプリメントとしては、卵巣や子宮の血流を増やし、なおかつ卵子の質を上げることも期待できるEPAやビタミンEのほか、バイアグラの腟錠なども考えています。
漢方薬では、やはり冷えがよくないということで、冷えを強く訴える方には当帰芍薬散を処方していますね。
アシストハッチングも
ほかにされている工夫は?
伊藤先生 いい受精卵を一度凍結してから戻してもなかなか着床しないという方には、レーザーによるアシステッドハッチングも試みています。
凍結した受精卵は透明体が硬化することが多いといわれているので、レーザーで膜を薄くしてあげる方法です。
これで着床しやすくなるのではないかと思っています。
※ロング法:月経前の黄体期からGnRHアナログ製剤を使用し、月経3日目からHMGを7日間連続して筋肉注射する方法。
※ショート法:月経開始日からGnRHアナログ製剤を使用し、月経3日目から HMGを7日間連続して筋肉注射する方法。
※アンタゴニスト法:ある程度まで卵子が成長したところで、GnRHアンタゴニストという薬剤を注射し、卵巣を刺激する方法。GnRHアンタゴニスト製剤は黄体 形成ホルモンの分泌を抑制する働きを持ち、採卵前に排卵してしまうことを防ぐ。
※EPA:エイコサペンタエン酸。
※DHEA:デヒドロエピアンドロステロン。男性ホルモンの1つ。