新鮮胚より凍結胚を 移植したほうが 若干妊娠率が上がる 傾向があります
凍結は移植を活用するのは
体外受精や顕微授精の際、新鮮胚ではなく凍結胚で移植することがありますが、これはなぜですか?
秋山先生 当院で胚の凍結をすすめる場合は、代表的な理由が3つあります。
1つめは、胚移植をして妊娠が成立した時、重症の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になってしまうと考えられる場合。
2つめは、特に年齢の高い方に多いのですが、採卵時期に子宮内膜が十分厚くなっておらず、そのまま戻すと着床しにくいと考えられる場合。
3つめは、卵巣の反応が遅く、排卵後に出てくるべき黄体ホルモンが上昇してきてしまっている場合です。
また他に、移植時に旅行に行かれるなど治療スケジュールの問題で、患者さんのご希望で胚を凍結することもあります。
妊娠率が高い理由
新鮮胚移植と比べ、妊娠率に違いはないのでしょうか。
秋山先生 余剰胚の凍結融解胚移植の経験からみると、新鮮胚移植を行うより、凍結融解胚移植のほうが若干、妊娠率が高い傾向にあります。
最近ではほとんどの施設で同様の傾向がみられるようですね。
なぜ妊娠率が上がるのですか?
秋山先生 卵巣を刺激した周期よりも、刺激しない自然周期やホルモンで着床環境を整えた周期のほうが子宮内膜の環境がよくなる、要するに子宮内膜が胚を受容する期間が長くなるという説があります。
このようなことから、胚を凍結してから戻したほうが妊娠しやすくなるのではないかと考えられています。
凍結によるダメージは
凍結・融解することで胚が劣化してしまうという心配は?
秋山先生 以前の凍結方法は、何時間もかけて少しずつ段階を経て温度を下げていくのが主流でした。
この方法でやっていた時は、かなり胚にダメージがありましたが、最近はほとんどの施設で、急速に胚を凍らせる「ガラス化凍結」という方法をとっています。
この技術により胚が傷む心配はほとんどなくなりました。
凍結胚移植は患者さんによってはメリットが多く、不安も少ない移植法なのですね。
秋山先生 仮に全胚凍結することになっても、デメリットは凍結の費用がかかることと治療期間が先延ばしになることだけではないでしょうか。
「採卵したら1日も早く結果を出したい」という患者さんのお気持ちは十分に理解できます。
しかし、大変な思いをして採卵したのですから、大事な胚を着床しにくいかもしれない時期に無理に移植して、結果として無駄にしてしまったり、せっかく妊娠されたのに重症のOHSSを発症して生命の危機に瀕するようなことになってはいけないと思います。
凍結胚移植をすすめられた場合、医師も妊娠のしやすさや安全性を考えた最善の方法として提示していると思うので、安心されていいと思います。