凍結胚より新鮮胚が 有効な場合もある。 一つの方法に こだわりすぎない ようにしています
新鮮胚移植が有利なケース
体外受精の移植のタイミングについて、考えをお聞かせください。
福井先生 治療の段階や、排卵誘発の方法によって組み合わせが数多くあると思います。
移植については、凍結胚移植が増えて、新鮮胚を移植する傾向が少なくなっていますが、新鮮胚で移植するほうが有効なケースもあると思いますね。
たとえば、どんなケースですか?
福井先生 胚盤胞までなかなか到達しない場合や、胚盤胞まで到達して凍結したけれど、移植しても着床しない場合など、卵子側の因子による場合ですね。
あとは排卵誘発剤を使用せずに自然周期で採卵した場合も、新鮮胚で移植することが多いです。
当院で行う凍結胚と新鮮胚の移植の比率は半々くらい。
新鮮胚移植のほとんどは自然周期や、それに近い方法で採卵している方です。
そのうちの4割が薬を使わない完全自然周期、6割がクロミフェンと注射を組み合わせて、低刺激の排卵誘発を行っているケースです。
また、排卵周期が正常な人は、最初から誘発をしないでまず自然周期で採卵にトライ。
データをとると、妊娠する人はだいたい2〜3回で妊娠しているので、それを超えると自然周期にこだわらずに誘発法もステップアップしていきます。
また、クロミフェンを使った周期は子宮内膜が薄くなりますので、基本的には凍結保存をして次の周期を待ったほうが間違いなく有利です。
凍結する胚は、分割胚でも胚盤胞でもいいのですが、今は胚盤胞移植が主流です。
基本的には受精した段階で凍結するよりも、胚盤胞まで育てて移植したほうが妊娠の確率は上がるといわれています。
しかし、なかなか胚盤胞にまで到達しない人もおられます。
せっかく採卵できても胚盤胞にならないと移植そのものがキャンセルになってしまいますので、これもどちらがいいと一概には決められません。
培養液も含めた培養条件
培養の条件や凍結が、受精卵の成熟に与える影響は大きいのでしょうか。
福井先生 特に受精卵が初期の段階で受ける凍結のストレスは大きいと思いますね。
胚盤胞まで育ててから凍結するほうが有利なのはそういう理由なのです。
また、培養液を替えることで、なかなか育たなかった受精卵が胚盤胞に到達できるケースもあります。
培養液もその人に合ったものを見つけることが大切だと最近よく思いますね。
当院では現在3種類の培養液を使っており、胚盤胞になかなか至らない場合は培養液の変更も選択肢の一つと考えています。
治療方針には理由がある
採卵した周期にすぐに移植を希望される方もいらっしゃいますよね。
福井先生 一気に治療を進めたいという患者さんのお気持ちもわかりますが、担当医が凍結をすすめる場合は、何か理由があるはずです。
たとえばクロミフェンを使っているのなら、内膜が薄くなるその周期は見送ったほうがいいし、卵巣過剰刺激症候群のリスクが高いケースも、移植は子宮内膜のコンディションを整えてからのほうがいい。
たくさん採卵できたのなら、受精卵を〝移植組〞と〝凍結組〞に分けて移植するスプリット法という方法もあります。
移植のタイミングは治療の段階やバックグラウンドに大きく左右されるので、納得できるまで患者さん自身も理解することが大切。
一つの方法にこだわりすぎないほうがいいと思いますね。