子宮筋腫の手術後は体外受精も視野に【医師監修】

【医師監修】宮崎 和典 先生 大阪医科大学医学部卒業。学生時代 の新生児医療への興味がきっかけとな り、体外受精や不妊治療の世界を志す。 同大学産科婦人科講師を経て、1992 年に不妊症、不育症治療専門クリニッ ク、宮崎レディースクリニック開業。開 業当初より泌尿器科の専門医による男 性不妊外来を開設する。A型・しし座。 以前は自ら婦人科の開腹手術を行って いたという先生。術後に行う不妊治療 を最優先に考え、現在は信頼のおける 施設に患者さんを紹介している。

着床に影響する筋腫

子宮筋腫がある場合の不妊治療、先生のお考えはいかがですか。

宮崎先生 子宮筋腫とひと口に言っても、いろいろなケースがあります。

また、筋腫があっても妊娠する方はいるので、絶対的な不妊因子になるとも限りません。

筋腫ができる場所や大きさ、数を考慮して治療を進める必要がありますね。

一般的に着床に与える影響が大きいのは、「粘膜下筋腫」と「筋層内筋腫」といわれています。

「漿膜下筋腫」といって子宮の外側寄りにできるものは、影響がないことが多い。

筋腫が1個で大きさも4〜5㎝以下ならまず問題ないでしょう。

やっかいなのは場所にもよりますが、小さい筋腫が複数個できてしまう多発性のケース。

これはやはり不妊因子となります。

子宮卵管造影で子宮が変形していたり、内腔の変形が認められる場合は、やはり着床率が下がります。

術後は、早めの妊娠を目指す

多発性の子宮筋腫の場合は手術したほうがよいのでしょうか。

宮崎先生 今、子宮筋腫の手術は、開腹手術よりも腹腔鏡手術を優先的に行いますよね。

でも、粘膜下筋腫の場合、あまり筋腫が大きくなると、腹腔鏡での手術が困難なことがあります。

私は症状がひどくなる前に腹腔鏡で取ったほうがいいと思います。

特に多発性の子宮筋腫において大切なことは、手術後、体外受精も視野に入れ、不妊治療を1年以内にスタートしたほうがいいということ。

5個、 10 個、 20 個と筋腫ができる多発性の子宮筋腫の人は、手術で筋腫をすべて取り除いても、たいていは1年くらい経つと元に戻ってしまうことが多い。

何のために手術したのかわからなくなってしまうのです。

当院でも何人か経験がありますよ。

患者さんは「せっかく手術したので自然妊娠できるかもしれない」と思うようですが、命に直接関わらない疾患で、2回も同じ手術をすることはおすすめできません。

癒着を起こすなど、条件はどんどん悪くなりますから。

内膜症を併発する??

多発性の場合以外にも、手術したほうがいいケースはありますか?

宮崎先生 子宮が変形してしまうような大きな筋腫がある場合ですね。

たとえ筋腫が1個でも、妊娠してから破水を起こすなどのトラブルを起こす場合があるので、取ったほうがいいでしょう。

それから、手術をするかどうか迷う時は、他の疾患についても調べてみてください。

たとえば、子宮筋腫は子宮内膜症と合併することが多いのです。

場合によっては筋腫を取るだけでなく、子宮内膜症やチョコレート嚢胞など、ひどくなる前に一度の手術で他の病気の治療ができることもあります。

手術によって得られるものが多ければ、治療するメリットが大きいといえます。

子宮筋腫には、まったく同じ条件の人というのはありません。

単純な比較ができないので、その人の状況に応じた最もよい治療法を選んでいただきたいですね。

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