精神面と同じくらい、 実は経済的な理由でも 不安を抱えることが多い不妊治療。 このまま諦めてしまっていいの? 将来への不安はどうすれば? 田村先生のご意見を聞かせてください!
なつさん(アルバイト・36歳)からの投稿 Q.私は不妊治療を始めてから、うつっぽくなり、 ますます落ち込んで 感情のコントロールができずにいます。 家事もろくにできず、バイトに行くのもやっと。 最近、44歳の旦那の貯金額の少なさを知りました。 旦那が定年後も子どもはまだ成人しないし、 子どもを育て上げても老後が不安。 子どもに迷惑はかけたくない……。 このような状態では授かっても子どもが かわいそうじゃないかと考えてしまいます。 今日は人工授精の予定でしたが、私の気持ちが 安定せず、キャンセルしてしまいました。 今後どうしたらいいか、ご意見を聞かせてください。
お金じゃなく将来後悔しない 人生設計を持ちましょう
お金に「一生これだけあれば子どもを育てられる」なんて保障はどこにもありません。
そんなことを考えても仕方がないと思いませんか?
周りをちょっと見渡してみましょう。
不妊治療にお金がかかって大変と言いながら、新しい車やバッグを買っている人がいる。
その一方で、いつも同じ服を着て、生活を切り詰めながら治療している人もいる。
どちらもその人の人生だから。
それがいいかどうかは誰にもわからない。
あなたは今諦めて、 10 年後納得していられるかしら?
今はまだ年齢的にゆとりがあるから、「経済的」という最も自分から責任の遠いところに理由を置いて、少し逃げているような気がしますよ。
医師は自分の価値観を押し付けてはいけないと思いますが、私が患者さんにいつも言っているのは、 60 歳になった時に後悔しないように生きましょうということです。
この方は「お金がないから、うつ状態だから、妊娠するべきじゃない」と思い込むことで、自分を防御しているのでは。
疲れて気持ちがふさぐなら、いったん治療を休んでみてはどうでしょう。
逃げるのとは違いますよ。
完全に背中を向けたら戻って来られないから、目を開けたまま休憩するんです。何に価値を置くのか、自分の人生設計をきちんと持ち、将来、後悔しないための努力をしてくださいね。
世の中には給食費を払えない人もいるけれど、お金は最初からないと思えば何だってできるんだから。
本当に経済的にしんどい人は 泣いたり逃げたりしない
貯金や定年の話が出ましたが、私は 30 歳で産んでも 40 歳で産んでも、経済的な負担は変わらないと思います。
よく「今は貯金がないから、子どもは5年後でいい」なんて声を聞くけれど、私は今でも5年後でも一緒だと思いますね。
子ども手当や扶養控除もあるし、生涯手取はそれほど変わらないでしょう。
それより「本当は何が気になっているのか、自問自答してみよう」と言いたい。
自分の深層心理に気付かず自分をカムフラージュして逃げていると、あとで絶対後悔します。
それに、本当に経済的にしんどい人は逃げません。
うちの患者さんには、黙って来なくなる人もいれば、「先生、申し訳ありません」とわざわざ挨拶に来る方もいます。
「先生、ホントに1回だけ」と、経済的理由で体外受精を最初から1回と決めてる人もいらっしゃいましたね。
本当はあまり最初から1回と決めないほうがいいんですが……。
でも、覚悟ができているから、泣いたりしない。
きっと経済的な問題からも逃げないのでしょう。
なつさんは人工授精をキャンセルしたということですが、ひょっとしたら言い訳をつくってしまったのかもしれませんね。
人工授精でもダメだったら、今度はもっとお金のかかる体外受精にいくのが怖いのかな?
たとえ人工授精で結果が出ずに体外受精へ進んだとしても、それはフィールドが変わっただけで、また違う新しい治療がスタートするということ。
治療の方向が定まってくる分、そこで使った治療費が無駄になっているわけじゃないんです。
もう一度自分の内面を見つめ直して、お休みしてもいいから、後悔しない道を選択してほしいですね。
秀子の格言
子どもを諦める理由を探しているだけなら、 今は目を開けたままお休みしては