採卵数と妊娠率は比例?
体外受精の際、たくさん卵子が採れたほうがそれだけ妊娠率も上がると考えている患者さんも多いようです。先生はどう思われますか?
京野先生 これまで、卵巣機能が正常な方にはロング法による排卵誘発が最も適していると考えられてきました。
ロング法で卵巣を刺激すると、確かに 12 〜 13 個ほどの卵子が採れ、なおかつ質のよいものも多く妊娠率も高いのですが、体にとっては刺激が強い。
卵巣が腫れてしまうなど、OHSSのリスクも高くなるんです。
採卵数が多いほうがいいと思われているかもしれませんが、実際は少なくても妊娠できてしまうことが多い。
学会などでは、リスクをともないながら卵子をたくさん採る必要があるのか、という意見も最近出始めているんです。
バランスを考える
もっと体にやさしい方法で、採卵数も適度に、ということですか。
京野先生 ロング法よりマイルドな低刺激法が徐々に注目され始めていて、この方法だと採卵数は6〜8個ほどが目安となります。
低刺激が注目される理由
刺激が少ないということで考えれば、自然周期の採卵でもいいのでは?
京野先生 確かに自然周期であれば、患者さんへの負担はほとんどありません。
ただ、産まれてくるお子さんの率はどうでしょうか。
不妊治療を受けている患者さんが一番望む条件は妊娠することです。
一度に卵子が採れる確率というのはだいたい7〜8割程度。
受精率は80 %くらいだとすると、受精卵が得られる確率は 64 %くらいまで落ちてしまうんですね。
胚盤胞まで育つのはその半分程度。
それを移植して妊娠するのはさらにその半分くらいですから、 15 %に。
流産する確率も考えると、最終的な生産率というのは1割程度になってしまう。
卵子が少なければ、やはり赤ちゃんが生まれるチャンスは減ってしまうんです。
そこで、採卵数も適度で凍結も可能、なおかつ副作用が少ないロング法と、自然周期の中間である低刺激法に注目が集まっているんです。
患者さんに合う培養液を
強い刺激をして卵子をたくさん採って、という考え方は変わりつつあるのですね。では、体外受精による妊娠に影響があると言われる培養液の状況はどうでしょうか。
現在、日本で使われているのは外国から輸入しているものですが、今、日本人の体質に合わせた培養液が国内で研究されています。
培養液がさらに完璧になれば、妊娠率ももっと高くなる可能性があるのではないでしょうか。