働く女性は、言い訳ができる

家庭を持つ女性にとって 仕事と治療の両立は最大のテーマ。 職場の仲間や上司に打ち明けるべきか、 周囲の目も気になるところです。 今月は〝働く女性と不妊治療〞について 勇気のわいてくるアドバイスです!

田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十 字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産 したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、 1995 年に不妊部門の現クリニックを開設。繊細な感性を 秘めた、おおらかな人柄が魅力の先生は、A型のみずがめ 座。自らの不妊症や乳がん克服の治療体験に基づいた心 のケアは、女性医師ならでは。子育てをしながら、一線で 医師として働き続けた先生の言葉に説得力あり。
はるこさん(会社員・33歳)からの投稿 Q.今週、体がしんどくて仕事に集中できません。 強い刺激で誘発したので、お腹がパンパン。 本当は休みたいけど、会社の人には迷惑をかけてい るので休みにくいし。お仕事しながら、 家事やいろいろなことに頑張りながらの不妊治療、 つらいですね。憧れの産休のためにも 両立して頑張りたいのに、 今は仕事を辞めたくてしょうがありません。

カミングアウトした途端 患者さんの顔つきが変わった!

うちの病院は夜間診療があるということもあって、働きながら通院されている患者さんが8割ほどいらっしゃいます。
家事と治療だけという人は案外少ないですね。
それで、皆さん仕事を持ちながら不妊治療するのはつらいとおっしゃるけれど、専業主婦より言い訳ができる分、まずラッキーだと思うべきです!
1週間も完璧な主婦業をやったらきっと飽きますよ(笑)。
不妊治療を続けている人は、元来まじめな人が多い。
家事も仕事も手抜きができないんです。
だから治療も「どうしてもその日に行かなければ」と思いがちだけれど、来られないときはそう言えばいいんです。
それに対応するのが医師の仕事だと、私は思っています不妊治療がつらい本当の理由は、先の達成感がないからでしょう。
たとえば、習い事やキャリアアップのための勉強なら、その先に求めるものがあり、一定のスキルが得られます。
一方、不妊治療では「こんなことをやっていていいのかなぁ」と思いながらつらい治療をし、職場で仕事を代わってもらうのに頭を下げ、何よりうまく成果が出なかったときのことを考えると……非常につらいことばかりです。
以前、患者さんで、3年前にいったん治療をやめて、特に「再開します」とは言わずに、1年半前にまた戻ってきた人がいるの。
この方もお仕事をされていたんだけど、以前に比べて、ひと目でわかるくらい顔つきが変わっていた。
明らかに表情がやわらかくなっているの。
以前はなかなかいい結果が出なかったのに、再開してからは排卵誘発に1回目で成功。
そこで患者さんがおっしゃった言葉が「やっぱりカミングアウトすべきですね」でした。
職場で治療のことを打ち明け、周りの上司や同僚に協力を仰いだのだそうです。

自分を楽にするには どうしたらいいか考えて

身体的にも精神的にも女性の負担が大きい不妊治療ですから、自分を
楽にするにはどうしたらいいか考えないといけませんね。
周りに協力してもらうことが大切。周りとは、ドクターであり、同僚や上司であり、旦那さんのこと。
職場でもぜひカミングアウトしてください。
でも、そこは前にも話したように、ギブ&テイク、「気は心」の精神で。
たとえば、仕事を代わってもらっら、次は残業を手伝うとか、上司には「昨日はありがとうございました」とお茶を入れてあげるとか。
常に「皆さんご協力ありがとう!」という思いでやっているんだということを、ときどきは飴玉や義理ョコでも配ってどんどん伝えましょう。
そういう感覚は自分だけでなく、周りをハッピーにします。
職場の男性の目が気になるという人も多いらしいけど、「女性は結婚するべき」「子どもを育てて家庭を守るべき」という既成の価値観にがんじがらめになっているのは、その人自身かも。
あなたが思うほど、誰もあなたを見ていません。
他人に対する見栄をなくしたら、人間はとても楽になります。
見栄は反発係数1で自分に返ってきますからね、結局、傷つくのは自分自身。
心の鎧を脱ぎ、〝気持ちを楽にすること〞にすべてを集約して治療に向かいましょう。

秀子の格言

働く女性は言い訳ができることを まずラッキーと思うべき。 職場では自分を楽にして あげることから始めましょう。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。