2回の顕微授精。受精卵がうまく育たない原因は?【医師監修】

【医師監修】吉田 淳 先生  愛媛大学医学部卒業。産婦人科・泌 尿器科医。東京警察病院産婦人科、 池下レディースチャイルドクリニック、 東邦大学第一泌尿器科非常勤講師な どを経て、1999年木場公園クリニッ クを開院。不妊症治療の情報収集の ため、アメリカや日本国内の不妊症 専門施設の見学・研修を数多く積ん でいる。「2日間で50km走った」「今 日も診察後にスタッフ4人と走るよ」 とパワー全開! 静岡で行われたマ ラソン大会では、無事に初マラソン 完走。
ぷりんさん(33歳)からの投稿 Q.乏精子症、精子無力症、奇形精子が判明し、ロング法で顕微授精にトライ。1回目は15個採卵して2個受精、3日目で成長ストッ プ。2回目も「奥さんに問題はないし、まだ若いから」とロング 法をすすめられ、20個採卵、2個受精しましたが、5日目でストッ プ。受精率が低く、胚盤胞まで育たない原因を聞くと「精子が悪 い、卵の質がよくない」とのこと。また、最初に男性不妊が判明し、 女性側の検査は採血以外特にしていません。受精卵が育たない 理由を判明させるためにしたほうがいい検査はありますか?

精子所見について

受精卵がうまく育たないとのことですが、原因は、精子と卵子のどちらにあるのでしょうか?
吉田先生 今は、 10 匹精子がいれば妊娠できるという時代です。
ぷりんさんのご主人の精子のデータを見ると、奇形率 87 %、運動率6%程度と、状態のよい精子の割合は低いですが、数は490万匹採れていますから、受精可能な精子数は十分あると思います。
とすると、精子だけが問題ではないのかもしれません。
精子の質は選べても、卵子の質は選べません。
女性側の検査は血液検査しかしていないということですから、卵子についてもさまざまな角度からアプローチしていく必要があります。

排卵誘発法の再考

2回ともロング法で採卵されていますが、先生ならどう治療を進めていかれますか?
吉田先生 一般的には、 15 個の卵子があれば 12 個くらい受精卵ができてもいいのですが、たしかに受精率が低いですね。
原因の一つとして考えられるのは、卵巣刺激の方法がうまくいっていないのでは、ということです。ロング法を続けて2回行って、結果が変わらないということは、この方法がぷりんさんの体質に合っていないからかもしれません。
「採卵後、卵巣が腫れたため、凍結胚移植予定だった」とありますから、こういったこともあわせて考えると、まずは卵巣刺激法の見直しをおすすめします。
いずれにせよ、2回同じ方法で結果がよくなかったのですから、次は違う方法に変えるのがいいでしょう。
私なら、アンタゴニスト法に変えますね。

受精卵の成熟率も向上できる?

ほかに考えられる原因は?
吉田先生 質問内容からは詳しくわかりませんが、受精卵の成熟率が実際どのくらいだったのかが気になります。
また、培養液の環境などをあわせて、総合的に考える必要があると思います。
さらにできることとしては、受精卵をカルシウムイオノフォアという薬剤処理で活性化させたり、電気刺激を与えて受精を促すなどの方法も考えられます。
また、受精障害がないか調べるのも有効でしょう。
このままでは子どもは無理なのでは、と不安なようですが。
吉田先生 結果が出ない場合は、治療状況を細かく分析し、原点に返って丁寧に治療の見直しをしていく、これが大切です。
この方はまだまだ十分チャンスがありますから、1回1回の治療を大切にしていきましょう。
ぜひ諦めないでトライしていってほしいですね。
※アンタゴニスト法:ある程度まで卵子が成長したところで、GnRHアンタゴニストという薬剤を注射し、卵巣を刺激する方法。 GnRHアンタゴニスト製剤は黄体形成ホルモンの分泌を抑制する働きを持ち、採卵前に排卵してしまうことを防ぐ。ショート法やロング法での点鼻薬の代わ りにGnRHアンタゴニスト製剤を用いる。

 

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