【医師監修】石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人病 センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008年より久保み ずきレディースクリニック美賀多台診療所副院長。不妊治療から周 産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート態勢が整う 同クリニックで、副院長として精力的に活動する。神戸市在住。プ ライベートでは水泳やスキーなど、スポーツを愛する3児のやさしい パパ。A型・さそり座。
ランナーズさん(主婦・40歳)からの投稿 Q. 初めての体外受精、 自然周期で 2 個採卵しました。 胚盤胞まで育てて凍結する予定でしたが、 ※ 桑実胚までで卵割がストップ……。 よい卵に出会えるまで待つしかないと わかってはいるのですが、 高齢でも胚盤胞まで育ったよという方が どれくらいいるのか知りたいです。
※胚盤胞と桑実胚:受精が完了すると卵割を開始し、受精後3~4日で16細胞期の状態になる。この時期の受精卵を桑実胚といい、さらに卵割を繰り返し、 受精後4~6日で胚盤胞となる。この時期には子宮内に到達する。
年齢と、胚盤胞到達率
胚盤胞まで到達する割合は、そもそもどれくらいなのでしょうか?
石原先生 条件にもよりますが、排卵誘発剤を投与する過排卵刺激をメインに行っている当院の場合、継続して培養した胚のうち、胚盤胞へ到達する胚は5割弱くらいです。
20 代の方で 55 %、 30 代で 45 %、 40 代では30 数%。一度に複数個が採取できるような刺激をしたとしても、1個の受精卵が胚盤胞まで到達できる割合は3割くらい。
40 歳を越えたら、1歳ごとにどんどん確率が下がりますので、1年1年が勝負になってくると思います。
自然周期の胚盤胞到達率
自然周期だとどれくらいの割合で胚盤胞まで育ちますか?
石原先生 だいたい3割くらいでしょうね。排卵誘発剤を使用するか、自然周期なのか、どっちを取るかということですが、自然周期は薬の投与が少ないからストレスが少ないだろうと思っていらっしゃる方が多い。でも、妊娠するまで毎月採卵するのは患者さんにとっては大変なことです。
40 歳を越えてからのひと月ひと月の治療をどう捉えていくかは、学会でも意見が分かれるところです。それぞれの先生のお考えがあると思いますが、当院では1回の周期でできるだけたくさんの卵を獲得し、そのなかでいいものを育てていきたいというのが基本です。
年齢と受精卵の育ち方
やはり年齢が関わってきますか。
石原先生 40 代であれば当然、胚盤胞まで到達しない人が多いわけですが、胚盤胞でなくても初期胚で妊娠できる人はいます。卵子が受精卵になる確率は6〜7割。さらに受精卵が初期胚まで育つ割合が9割くらい。
ただ、そこから胚盤胞まで到達する確率となると、一気に半分になります。
どういうことかというと、卵管内の環境と体外の環境を比べると、今はまだどうしても、卵管内のほうが受精卵にとってよい環境だろうということです。培養の技術にはまだまだ改良の余地があるのだと思います。
胚盤胞まで育ててからの移殖は、確かに妊娠率が高いのですが、もしかしたら初期胚でも十分に妊娠できるチャンスがあるかもしれない。最後まで諦めずに、納得できる治療を続けてほしいと思います。