ご相談の内容からは、これまでに顕微授精で7回の採卵を行い、
胚盤胞を6個凍結できているとのことです。
40歳前後では採卵を繰り返しても胚盤胞が得られないことも少な
くないため、
胚盤胞が得られているという点自体は必ずしも悪い状況ではありま
せん。
一方でこの年代では胚の染色体異常の割合が高くなることが知られ
ており、
胚盤胞であってもすべてが正常な染色体を持つわけではありません
。一般に40歳前後では、
胚盤胞のうち染色体が正常な胚はおよそ30~40%
程度とされています。
次に、その正常胚1個を移植した場合の生児獲得率は、おおよそ50~65%程度と報告されています。これらの数字を組み合わせて考えると、胚盤胞1個あたりの生児獲得率は概ね15~25%程度と推定されます。さらにモザイク胚でも出産に至る例があることを考慮すると、臨床的には胚盤胞1個あたりの生児獲得率はおよそ20~30%程度と考えるのが現実的です。もし胚盤胞が6個ある場合、この確率から理論的に計算すると、少なくとも1回出産に至る累積確率は80%前後とかなり高い値になる計算になります。ただし実際の臨床では胚の質のばらつきや子宮側の条件なども影響するため、必ずしもこの通りになるとは限りません。

ご質問のZymot、PICSI、タイムラプス培養などは「アドオン」と呼ばれる補助的な技術です。タイムラプス培養は胚を培養器から取り出さずに連続的に観察できるため、異常な分割を示す胚を見分けるなどの利点がありますが、これ自体が妊娠率や生児率を大きく改善するという明確な証拠は現在のところ限定的です。またPICSIやZymotは精子をより選別する方法ですが、男性側に明らかな精子の問題がある場合には一定の有用性が示唆されるものの、すべての顕微授精症例で胚盤胞率や妊娠率が大きく向上するという結果は示されていません。そのため、すでに胚盤胞が得られている場合には、これらの方法をさらに追加することで成績が大きく改善するとは必ずしも言えないのが現状です。
もし複数回の胚盤胞移植を行っても妊娠に至っていない場合には、胚の問題だけでなく子宮側の環境を一度評価することも重要になります。子宮鏡検査による子宮内腔の確認や慢性子宮内膜炎の検査などを行うことで、着床に影響する因子が見つかることもあります。また年齢を考えると、時間を有効に使うという観点も大切です。胚の染色体を調べて正常胚を選ぶ着床前遺伝学的検査(PGT-A)を行うことで、染色体異常胚の移植を減らし、出産までの時間を短縮できる可能性があります。
また年齢を考えると、時間を有効に使うという観点も大切です。胚の染色体を調べて正常胚を選ぶ着床前遺伝学的検査(PGT-A)を行うことで、染色体異常胚の移植を減らし、出産までの時間を短縮できる可能性があります。一方で、もし今後胚盤胞が得られにくくなってきた場合には、初期胚を2個移植するという方法が検討されることもあります。ただしこの場合、ごくまれではありますが多胎妊娠になる可能性があるため、主治医と十分に相談しながら慎重に判断することが大切です。