ご質問の件お答えさせていただきます。
ここでは、Th1/Th2比 について重点的に書いてみます。
まずは、
大前提としてこの話はとてもややこしくてわかりづらい話です。
書いてみますがうまく伝わるか少し自信がありません。
Th1/Th2比は、なかなか妊娠・出産に至らない反復着床不全、難治性不妊症の中の一部にTh1/Th2比の高い人たちが存在し、この人たちに免疫抑制剤(タクロリムス)を内服してもらうことで、妊娠出産にたどりつけた人がいました。というのが始まりです。
まずは妊娠についてですが、妊娠とは自然界の中では実はとても不思議な現象と言えます。人間には免疫というシステムがあります。これは外部の者(菌やウイルスなど)が体内に侵入してきた際には排除するようにするシステムです。人間の体の中の自衛隊みたいなものですね。医療が進歩し、心臓移植や肝臓移植、腎臓移植などを行うことが出来るようになりましたが、これは他人の臓器です。なので、それらを自分の体に持ち込む(移植する)と、本来は拒絶反応を起こします。
そのため臓器移植などを行う際にはできるだけ自分に“近い”
人の臓器を移植するようにして、
それでも起こる拒絶反応は免疫抑制剤で抑える必要があります。
ここで、妊娠を考えてみると、赤ちゃんは“自分(自己)”か“
自分でない(非自己)かで言うと自分ではありません。そのため、
本来は自分以外のものが体に入ってきた場合には拒絶反応を起こす
はずですが、起こしません。このことを免疫寛容といいます。
実はこの免疫寛容の仕組みは今も正確には明らかにはなっていませ
ん。しかし、哺乳動物(ヒトを含む)
では犬や猫など含めて不通に行われています。
この免疫寛容のシステムがうまく働かないと、
妊娠した場合に赤ちゃんも攻撃してしまい妊娠継続ができないとい
うことが起こると考えられています。
さて前振りが長くなってしまいましたが、ここでTh1/Th2比の話になります。
Th1とTh2は、いくつかの種類があるヘルパーT細胞の仲間です。ヘルパーT細胞は先述の免疫を担当する細胞の一つです。免疫を担当する細胞には多くの種類があります。自衛隊に例えるなら、歩兵だけでなく、戦車部隊や飛行機部隊など様々な敵に対処するために自衛隊にも色んな部隊があるのと同様です。体の中ではTh1もTh2もそれぞれがそれぞれの任務を持っていて、どちらが欠けても困りますが、Th1/Th2比が高い(Th1優位)状況になると、本来攻撃しない予定の赤ちゃんを攻撃してしまう(免疫寛容が不成立)ので妊娠維持ができなくなる場合があると考えられました。
それなら、Th1を抑えるために、
免疫抑制剤のタクロリムスを内服することで、
暴走する免疫を抑えて赤ちゃんを攻撃するのを抑えてやることで妊
娠出産につなげることが出来るようになる。というのがTh1/
Th2比の話になります。
しかし、まだまだデータが少なく、保険適用はされていません。先進医療Bに指定はされていますが、他の不妊関係の先進医療は先進医療Aであり、どこの施設でも行える先進医療ではないため、現実的には先進医療として行うことはできないものと考える方がいいと思います。

のぞみさんは年齢的にはARTなら自費でのARTをされているとおもいますので、混合診療の心配は気にしないでよいと思いますが、前述の状況もあり、自費であってもどこの施設でも行っているわけではないと思います。また一般不妊治療を保険で行っている場合には混合診療が問題になると思います。
すべての免疫システムは絶妙なバランスを保つことで維持されています。このバランスが崩れることで起こる疾患が多種あり、喘息やアトピー、リウマチなどの自己免疫疾患など数え切れません。そのため、自分で何かをすることでこのバランスを整えるというのは現実的にはなかなか難しいと思います。
厳しい言い方になってしまい申し訳ありませんが、のぞみさんの妊娠で一番原因になりえるのは年齢かもしれないので、なかなかそこに対する数字を薬やサプリなどで改善することはできないと言えます。その上で、それでもTh1/Th2の治療を行いたいとのことであれば、現在の治療施設では対策はしないとのことであれば、転院を考えることになるのかもしれません。