▶︎チョコレート囊胞と卵管留血腫の妊娠率への影響
子宮内膜症で左右に最大3cm のチョコレート囊胞、左側は卵管留血腫もあり、おそらく癒着もあります。病院の卵胞チェックと基礎体温を元にタイミングをとって約1 年経ちますが、チョコレート囊胞と左側卵管留血腫があるため余計に授かりづらいのでしょうか? 卵管留血腫は手術が必要でしょうか?そこまで大きくないので手術は想定外でしたし、体外受精をするなら妊娠率は変わらないと聞いたこともあり、できれば手術せずに体外受精に進みたいと思っています。

順天堂大学医学部卒業。膨大な数の研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985 年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990 年、セントマザー産婦人科医院を開院。現在も研究と実験に精力的に取り組んでいる。日本受精着床学会監事。順天堂大学医学部客員教授。
チョコレート囊胞と卵管留血腫は妊娠にどんな影響がありますか?
田中先生●卵管は精子と卵子が出会う生命の誕生におけるもっとも大事な場所であり、そこに流れている卵管液は非常にエネルギーが高く、胎児にとっては培養液のようなものです。
しかし、栄養価と濃度が高いがゆえに、卵管が詰まってそこに滞留することで有害な物質(着床に影響を及ぼす液体)が発生してしまい、その物質が着床の場所となる子宮内膜に逆流するため着床率が下がります。当院で卵管留血腫の患者さんを診た経験はほぼなく、卵管水腫に比べると珍しいケースではありますが、発症する症状でもっとも多いものとして異所性妊娠(子宮外妊娠)が挙げられます。卵管水腫も卵管留血腫も自覚症状は臭いのあるおりものが増えることです。子宮卵管造影検査では100%発見できます。
チョコレート囊胞は、排卵時に出る分泌液が古い血液として子宮内膜に留まったもののことです。正常な部分にも侵食し、増殖していくことで卵巣機能が下がります。卵子の質にはあまり影響はありませんが採卵できる卵子の数は減少します。また、採卵する卵子に干渉する場所にあれば、場合によっては腹膜炎のリスクも生じます。大きさによっては癌化のリスクもあり、日本産科婦人科学会のガイドラインでは6〜7cmですが、当院では5cmから切除を提案しています。
現在はタイミング法で妊娠を目指していますが、体外受精をする場合でも手術は不要でしょうか?
田中先生●基礎体温と主治医の指導を元にタイミングを取っているため「ズレはない」と考えているようですが、卵管留血腫や卵管水腫がある場合は確実に着床率が下がるので、タイミング法で目指すという診断・治療を提案されていることに疑問を感じます。
私なら、まず採卵して体外受精し、凍結したのち、着床障害を起こさせないために腹腔鏡手術で卵管を根部から切除して、その後に受精卵を移植、という方法を提案します。また、腹腔鏡手術をする際にチョコレート囊胞も同時に切除すれば、より着床率上昇が望めます。じゅりさんはAMHの数値が5.5ng/mlと非常に高く、月経も正常とのことですから、妊娠の可能性は極めて高いといえるでしょう。年齢的にも保険診療を希望していることからも、早く体外受精にステップアップして妊娠を目指していただきたいですね。