チョコレート囊胞がある人にとって 最善の不妊治療は?

相談者 :なっちさん(29歳)
▶︎人工授精失敗後の体外受精への移行について
5cmの子宮内膜症があります。生理痛や卵管の詰まりはなく、人工授精で妊娠できたらいいなと思っていましたが4回目も失敗し、このまま人工授精を6回までしたほうがいいのか悩んでいます。チョコレート囊胞も大きく、「もしかしたら着床しにくいのかもしれない」と主治医に言われています。1日でも早く授かりたいのですが、今すぐ体外受精にするべきなのでしょうか。体外受精にステップアップすれば、妊娠率は上がるでしょうか?
【医師監修】秋山レディースクリニック秋山 芳晃 先生
東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属病院、国立大蔵病院に勤務後、父親が営んでいた産科医院を継ぎ、不妊症・不育症診療に特に力を入れたクリニックとして新たに開業。

子宮内膜症があると妊娠しにくくなるのでしょうか。

秋山先生● 子宮内膜症の患者さんの約50%に不妊が合併するといわれており、子宮内膜症は妊娠を妨げる病気の代表的なものといえると思います。
子宮内膜症の人が妊娠しにくくなる原因として、骨盤内の癒着による卵管の障害、卵巣チョコレート囊胞による卵巣機能の低下、炎症による精子や受精卵への障害などが考えられています。
主治医が言われたように、着床に対する影響も可能性として挙げられますが、これに関してはまだはっきりしたことはわかっていません。

チョコレート囊胞がある患者さんの場合、どのような不妊治療が最適だとお考えですか?

秋山先生●チョコレート囊胞をもつ子宮内膜症患者さんの不妊治療方法の選択に関しては卵管癒着の程度が特に重要視されています。ご年齢やホルモンの状態にもよりますが、卵管の癒着などを認めない場合は体外受精の前にタイミング法や人工授精による治療を試みるのが一般的だと思います。
なっちさんもチョコレート囊胞はあるものの、卵管の癒着はないとのことなので、主治医は一般不妊治療から始めることをおすすめしたのではないでしょうか。

体外受精にステップアップすれば妊娠率は上がりますか。

秋山先生●子宮内膜症が体外受精の妊娠成績に悪影響を及ぼすという報告もありますが、最近では妊娠率をそれほど低下させないという報告も。チョコレート囊胞があることで採卵のキャンセル率が上がり、採れる卵子の減少はあるものの、妊娠率には影響しなかったというケースも多いようです。
しかしながら、チョコレート囊胞がある患者さんは卵巣の予備能力が低下しており、不妊治療中も病状が進行するので、ステップアップのタイミングは慎重に見極めていく必要があります。

なっちさんもそろそろ体外受精による治療を視野に入れていったほうがいいのでしょうか。

秋山先生●なっちさんの場合、29歳とまだ年齢が若く、AMH値3・59ng/mlと著しい卵巣機能低下も見られないようですが、人工授精に4回トライしてまだ結果が出ず、今5cmの囊胞がこれからも大きくなる可能性を考えると、そろそろ体外受精へのステップアップを検討されてもいいタイミングなのではないかと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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