【Q&A】自然妊娠歴があるのに、体外受精はうまくいかない~田口早桐 先生【医師監修】

しみーさん(34歳)

2024年9月から妊活を開始し、すぐにタイミング法で妊娠しましたが、無頭蓋症のため11月に人工流産をしました。
その後、早く妊娠したい一心で体外受精にステップアップしました。
採れた卵はグレードが良いものが多かったのですが、
移植①は失敗
移植②は陽性判定(BT11でhcg167)。5w1dで胎嚢4.9mm、6w1dで胎嚢12mm、卵黄嚢のみ確認、胎芽・心拍確認できずでした。
5w3dにもう一度クリニックへ行き診察しましたが、やはり心拍確認できず、胎嚢16.7mm、胎芽1.9mmでした。

今回体外受精ですが、着床したのが遅く(毎日妊娠検査薬をしていましたが、BT7からようやくうっすら陽性反応がでました)育ちも遅かったです。週数に対して育ちが小さいことを医師に聞いても「こんなもんですよ」としか言われませんが、おそらくらこのまま流産になるだろうと思っています。

今回流産になった場合、移植①5aa(ホルモン補充周期)、移植②5ab(自然周期)ともに染色体異常だった可能性がありますが、着床の窓ズレの可能性はどの程度ありますか。

2024年9月にタイミング法で妊娠できたことや、移植した凍結胚のグレードも良かったことから、染色体異常が原因ではなく、移植日から一日程度早いため窓ズレが起こり、ギリギリ胚盤胞が着床したがうまく育たなかったのではないか、と考えてしまいます。
それとも、今回低hCGではありながらも妊娠できたということは窓ズレの可能性は低いのでしょうか。
タイミング法ではすぐ妊娠できたのに、体外受精ではなかなかうまくいかず、体外受精が合わないのではないかというふうにも考えてしまいます。体外受精が合わないということはないですか?

一刻も早く妊娠したいと思っていますが、今後どの方法で妊活していくのが最短ルートかわかりません。
率直なご所感をお伺いできればと思います。

オーク銀座レディースクリニックの田口早桐 先生にお伺いしました。

オーク銀座レディースクリニック 田口早桐 先生
川崎医科大学卒業、兵庫医科大学大学院修了。兵庫医科大学病院、府中病院を経て、大阪・東京で展開する医療法人オーク会にて不妊治療を専門に診療にあたっている。近著に、「ポジティブ妊活7つのルール」(主婦の友社)がある。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

●着床が遅かった原因として「着床の窓ずれ」の可能性について

過去に着床のご経験があるとのことですので、極端な着床の窓(implantation window)のずれは考えにくいですが、拡張胚盤胞を移植されているとのことですので、一度ERA(着床の窓検査)を行い、タイミングの最適化を図るのは有効と考えます。特に、初期胚やグレードが低め(グレード2~3)の胚、あるいは拡張していない胚盤胞では、胚自身の発育速度の影響を受けやすいため、ERAの結果が実際の移植タイミングとずれる可能性があります。
ですが、拡張胚盤胞であれば、検査の有用性は高いです。

●凍結胚のグレードが良いにも関わらず、発育が遅れた原因について

胚のグレードが良好であっても、染色体異常が存在する可能性はあります。実際、35歳前後の方では、およそ半数の胚に染色体異常が認められるという報告もあり、特に見た目に問題がない胚でも、異常を持っていることがあります。
今回のケースも、胚自体の染色体に問題があった、あるいはご指摘のように、やや早めの移植により「着床の窓」に微妙なずれが生じたことで、ギリギリ着床には至ったが、その後の発育がうまくいかなかったという可能性も否定はできません。ただし、どちらかといえば、胚側の問題のほうが影響は大きいと考えられます。

●低hCGで妊娠成立した場合、窓ずれの可能性について

hCGが検出されたということは、少なくとも胚が子宮内膜に接着し、ある程度着床が成立したことを意味します。そのため、大きな着床の窓のずれがあった可能性は低いと考えてよいでしょう

●自然妊娠(タイミング法)での妊娠歴から、体外受精が合わない可能性について

体外受精が「合わない」というわけではありませんが、胚を体外で培養することがストレスとなるケースもあり、これはカップルによって個人差があります。はっきりとしたことはまだ分かっていない領域ですが、自然妊娠のご経験がある場合、自然排卵周期での胚移植を検討することも一つの選択肢です。
また、今後のタイミング法による妊娠も十分期待できると思います。

●最短で妊娠につながる方針について

しみー様が一刻も早く妊娠を希望されている場合、PGT-A(胚の染色体検査)を併用した体外受精が最も効率的な方法と考えられます。染色体が正常な胚を選んで移植することで、胚側の問題をクリアにし、着床後の発育不全や化学流産のリスクを減らすことが期待できます
しみー様のご希望や体の状態に合わせて、最適な治療が選択されますようお祈り申し上げます。
どうぞお身体を大切になさってください。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。