【Q&A】40代、低hCGで妊娠の可能性は?~小川誠司先生【医師監修】

みちさん(46歳)

2回目ホルモン周期で妊娠判定は一応着床したとの事ですが、数値が低くhCG15.3です。
次回、採血し、超音波検査で胎嚢確認ですが、数値が上がっていなければ妊娠は難しいのでしょうか
流産、化学流産になる可能性が高いのでしょうか?
また余剰胚はグレード4bbが2つですが、妊娠の確率としては何パーセントくらいでしょうか?

小川誠司先生に教えていただきました。

藤田医科大学 羽田クリニック 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●現在のhCGの数値は15.3とのことですが、この数値から妊娠の可能性などの程度だと考えられますか?また、次回の採血で数値が上昇しなかった場合、妊娠が難しいと判断すべきでしょうか?

現在のhCG値が15.3とのことですが、この数値からは妊娠の可能性があるものの、「移植後何日目の採血か」が記載されていないため、明確な判断はできません。
一般的に、妊娠4週0日頃のhCG値としては低めであり、このまま数値が上昇しない場合は、化学流産の可能性が高いと考えられます。一方で、初回のhCG値が5程度であっても、最終的に出産に至った例もあります。
したがって、次回の採血結果が出るまでは、ホルモン補充などの治療は継続していただくことをおすすめいたします。

●現在のhCGの数値を踏まえ、流産や化学流産の可能性はどの程度あると考えられますか?

こちらも移植後何日目の数値かによって異なりますが、現在のhCG値の低さを考慮すると、胎嚢が確認できる可能性はおおよそ20%前後、出産まで至る確率は10%未満と推定されます。もちろん、次回のhCG値の推移によって見通しは変わります。

●グレード4BBの余剰胚が2つあるとのことですが、これらの胚を用いた場合の妊娠確率は何パーセント程度だと考えられますか?

保管されているグレード4BBの胚が44歳時に採卵された胚であることを考えると、1個あたりの妊娠率は10%未満と見込まれます。胚の見た目(形態評価)が良くても、年齢により染色体異常の頻度が高まるため、妊娠率には限界があるとされています。

●もし「妊娠が難しい」と判断された場合、次のステップとしてはどのような選択肢が考えられますか?

ご年齢やこれまでの治療経過を踏まえますと、自然妊娠やご自身の卵子を用いた体外受精での妊娠は難しい可能性が高い状況です。
その場合の選択肢としては、
• 卵子提供による不妊治療
• 養子縁組
などが現実的な選択肢となってきます。どのような形で家族を迎えるかについては、ご夫婦でじっくりご相談いただくことが大切です。

●今後、妊娠を成功させるために、先生がみちさんに推奨される生活習慣や治療方法はありますか?

加齢に伴う卵巣機能の低下や卵子の質の低下は、みちさんにとって最も大きな課題といえます。近年では、PRP(多血小板血漿)などの再生医療が不妊治療の分野でも応用されるようになってきました。PRPとは、血液中の血小板から多くの成長因子を抽出・活性化させたもので、本来私たちの体に備わっている治癒力や再生力を高めることを目的とした治療です。卵巣にPRPを投与することで、採卵数の増加や、移植可能な胚の数が増えたという報告があります。また、PRPにより体外受精で得られた胚の染色体正常率が上昇したという研究結果もあり、卵子の数だけでなく質の改善にもつながる可能性が示唆されています。

さらに最近では、ご自身の脂肪や月経血に由来する間葉系幹細胞を卵巣に投与するという、より先進的な再生医療も不妊治療に応用されつつあります。
一方、メラトニンやDHEA(Dehydroepiandrosterone)、PQQなど卵巣機能改善に良いとされるサプリメントの摂取や、十分な睡眠をとる、食生活の見直しも大切です。アンチエイジングの観点から適度なファスティング(断食)が有効との報告もありますので、無理のない範囲でそういった生活習慣の改善にも取り組んでいただくのが良いと思います。
みちさんにとって、いつまで、どこまで不妊治療を行うかは非常に重要です。後悔なさらないよう、ご夫婦でよく相談された上で、PRPをはじめとする今できる治療を最大限やられることが良いと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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