自費診療に移行。 ロスなく治療を進めるには?

相談者 :リンさん(40歳)
▶︎ERA®検査の必要性は?
体外受精で2年前に第一子出産。2人目妊娠のため、前回凍結していた受精卵を含め、良好胚を移植してもなかなか結果が出ません。1回出産もしており、今回の最初の移植でも稽留流産であったため、着床のズレの可能性が高いといわれています。次の移植の前にERA®検査をしたほうがいいでしょうか。なおPGT – Aは行っていない施設のためできません。もう保険は使い切り、次回の移植からは自費治療となります。できるだけ効率よく進められる治療法はありますか?
【医師監修】松本レディースIVFクリニック
松本 玲央奈 先生
聖マリアンナ医科大学卒業。東京大学大学院修了。2015 年にはヨーロッパ生殖医学会において着床に関する研究で、最も権威のあるAward など国内外で多数受賞。2020 年松本レディースリプロダクションオフィス院長就任。2021 年医療法人社団愛慈会理事長就任。2022 年JISART 理事就任。「患者さん一人ひとりにご納得いただける診断や治療を提供すること」が当院のモットー。

リンさんの場合、移植前の子宮内膜受容能検査(ERA®)をしたほうがいいでしょうか?

松本先生●以前の妊娠から時間が経っているので、着床の窓がズレ始めているという可能性もゼロではないと思います。しかし、年齢や自費診療に移行するという現状を踏まえると、ERARは最優先とはいえないかもしれません。

では、効率よく治療を進めていくためにはどんな手順で検査をしていったらいいのでしょうか。

松本先生●自費診療に移行するということを前提に、現在うまくいっていないことに対してできることを優先すべき順番で挙げていきましょう。
1つ目はPGT -Aという検査。受精卵の染色体数に異常がないかどうか調べる着床前診断ですね。以前妊娠した時と何が違うかと考えた場合、一番に着目するのが年齢です。年齢因子による影響を最も受けるのが卵子。卵子に染色体異常があれば妊娠しても流産になる可能性が高くなりますし、妊娠さえできないということもあります。PGT -Aを実施して、良好な受精卵を見つけて移植するというのがこの方にとって妊娠への近道になるかと思います。
2つ目が前述したERA R、3つ目は免疫の検査です。Th1とTh2という免疫抑制にかかわる細胞の比を採血して調べるもので、比が高いと受精卵に対する拒絶反応が強く、着床に影響を及ぼすことがあります。自費でしか行えない検査なので、まだ受けたことがないのでしたら、やってみる価値はあると思います。

まずはPGT -Aを受けるのがおすすめということですね。

松本先生●理論的にはそうなります。PGT -Aを受けて受精卵は正常で問題がないとなれば、受精卵以外の原因が考えられるので、次の段階でERARや免疫の検査を、という順番になるでしょう。
PGT -Aを受けるのなら、フレッシュPGT -Aという形がおすすめです。この方法は通常の検査より胚盤胞の凍結・融解の回数を減らせるので、経済的な面、さらに受精卵へのダメージも軽減することができます。
リンさんが現在通院されている施設ではPGT -Aは受けられないとのこと。自費診療への移行を機に、PGT -A、できればフレッシュでできる施設を調べて転院を考えてみてはいかがでしょうか。しっかり誘発剤を使って、卵子を多く採って胚盤胞も複数個確保。そしてPGT -Aに臨むというやり方が効率よく、早い妊娠も期待できるかと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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