ななみさん(30歳)
これまで自然妊娠で3回流産をしています。3回とも弱い心拍確認後の流産でした。
その後、PGT-SRを行うため採卵3回で11個の胚盤胞を検査に出した結果、2個の正常胚が見つかりました。
2個とも移植した結果、1度目はhCG5、2度目はhCG0で上手くいきませんでした。どちらも見た目は良好胚で、ホルモン値や子宮内膜の厚さも良好でした。
着床できない(続かない)原因がわからないまま次の治療に進むことに不安があります。
自分に着床できない原因があるのか、もしくはPGTによって受けた胚ダメージが原因なのかはわかりません。
自然妊娠では着床経験があるため、移植で上手くいかない原因があると考えた場合、ERA検査を受けた方が良いのでしょうか。
また、胚のダメージによって着床が上手くいかなかった可能性も考えると、転院した方が良いのかと悩んでいます。
AMHが年齢に対して低いので、なるべく早く次の採卵に進みたいと思っています。
はやしARTクリニックの林先生に伺いました。
早稲田大学第一文学部哲学科心理学専修、名古屋市立大学医学部卒。東邦大学産科婦人科学講座で生殖医療に携わったのち、2024年9月、「治療から妊娠まで、すべてに責任をもちたい」という思いで『はやしARTクリニック半蔵門』開業。心理学のカウンセリング技法を取り入れた不妊治療で精神面からも患者さんをサポートしています。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
PGTを行った胚の移植による妊娠率は60‐80%です。PGTによる胚へのダメージは0とは言い切れないこと、誤診断の可能性がある(PGTでは胎盤になる部分の細胞を採取し検査をしているため胚全体の状態を正確に反映していない可能性がある)ことから、PGT-SRの結果正常と診断された胚を移植しても、着床しないことはあります。
2回着床しなかったことを考慮すると、胚以外の不妊原因についても検査をすることは検討すべきで、ERA検査のような子宮内膜受容能検査や子宮内環境の評価は有効だと考えます。
35歳未満の均衡型転座患者さんについて、PGT-SRを行った群と自然妊娠をした群を比較した研究では、累積生児獲得率はPGT-SR群で67.6%、自然妊娠群で65.4%という報告がされており、PGT-SRを行っても生児獲得率は大きく上昇はしません。一方、流産はPGT-SR群の方が有意に少ないという結果が出ているので、PGT-SRを行う目的が流産を減らすことであれば有効といえます。
本来、自然妊娠できる方がARTを行うことの身体的、精神的、経済的な負担と、PGTにより得られる利点について比較された上で、今後の治療方針を決められるのが良いでしょう。PGT-SRを行って胚移植をしていくのであれば、ERA等の着床障害の原因検索を行うことは有効だと思いますし、その検査はこれまでの移植を行った施設で実施する方が治療歴等の情報が多く、より総合的な判断が可能ではないかと思います。