【Q&A】良好胚5回移植も着床しません~佐藤幸保先生【医師監修】

ぴょんちゃんさん(40歳)

5回良好凍結胚を移植しても着床しません。週に一回鍼灸院に行き治療もしています(子宝に特化した医院です)
保険適応回数が、残り1回ということもあり、大変焦っています。今後どうしたら良いかと思い相談しています。
どうぞアドバイスをお願いします。

ハシイ産婦人科の佐藤幸保先生に伺いました。

【医師監修】ハシイ産婦人科 佐藤幸保 先生
京都大学医学部附属病院および高松赤十字病院で体外受精など生殖医療を担当。患者さんそれぞれのニーズに応じて、個別化した不妊診療を提供することをモットーにしている。
資格:産婦人科専門医、生殖医療専門医、周産期専門医・臨床遺伝専門医
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

5回の凍結胚移植を実施し、いずれも着床に至らなかったとのことですが、どのような原因が考えられますか?

移植された胚盤胞は5BA、5AA’、5BB、5AB、4A’B、4AA、5B’Bの合計7個です。BB以上の形態良好胚盤胞なら1個あたり30-40%の妊娠率が期待でき、それを7個移植して一度も妊娠しない確率は3-8%に過ぎません。

夫婦の染色体検査についての記載はありませんが、夫婦に染色体の構造異常(転座など)がないのであれば、移植した7個の胚盤胞すべてに染色体異常がひそんでいた可能性はほとんどないでしょう。そう考えると、子宮側に何らかの問題のある反復着床不全の可能性が考えられます。反復着床不全の原因については、ビタミンD欠乏、子宮内フローラ異常、免疫異常などが提唱されていますが、実際にはほとんど解明されていません。

これらの胚の着床率について先生の見解を教えてください。

反復着床不全がなければ、AA胚盤胞1個あたりの妊娠率は40%程度ですので、2個移植した場合60%以上の妊娠率が期待できます。

鍼灸治療と不妊治療の併用のメリット・デメリットについて教えてください。

十分なエビデンスはありませんが、冷え症、月経痛、月経不順、イライラ、不眠などを軽減することが知られており、不妊治療にもメリットとなる可能性はあります。少なくともデメリットはほとんどないでしょう。

これまで受けてきた治療以外で、試す価値があると考えられる治療方法はありますか?

やっていないのであれば夫婦の染色体検査、免疫異常の検査(Th1/2比)、抗リン脂質抗体の検査をしてもよいかもしれません。治療として胚移植前のタクロリムス(免疫異常のある場合)、漢方薬(安胎薬として知られる当帰芍薬散や柴苓湯など)、バイアスピリンの内服は試してもよいかもしれません。

また自費診療とはなりますが、胚盤胞の染色体検査(PGT-A)で染色体が正常であることを確認された胚盤胞のみ移植することも試してよいかもしれません。ただ、ぴょんちゃんさんの場合、これまで移植された7個の胚盤胞すべてに染色体異常があった可能性は極めて低く、PGT-Aの効果はあまり期待できないかもしれません。

保険適応の回数が残り 1回で非常に焦っている状況を考慮に入れて、次に進めるべき最適な治療方法について、先生でしたらどのような提案をされますか?

現在通院中の病院でやってこられた治療に問題はないと思います。あとやるとすれば、すでに試しておられるかもしれませんが、胚移植前からタクロリムス、漢方薬(当帰芍薬散や柴苓湯など)、バイアスピリンを内服してみるくらいでしょうか。ただ、どれも有効とする確固たるエビデンスはありません。それがだめで、自費で体外受精を継続される場合は、当院ではまだ導入しておりませんが、PGT-Aを試してもよいかもしれません。

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