ステップアップと転院について

人工授精5回目も陰性。そろそろステップアップも考えるべき?

相談者 : ToMoさん(36歳)2024 年 1 月に子宮鏡検査・子宮卵管造影検査を受け、両側とも閉塞していたためFT(卵管鏡下卵管形成術)を行いました。夫も精液検査・血液検査を行い問題はありませんでしたが、セックスレスで性交痛もあるため人工授精に進みました。現在、人工授精 5 回目陰性の結果が出たところです。できるだけ自然な形で妊娠を目指したく、今周期も人工授精とシリンジ法で進めたいのですが、焦りもあります。体外受精も視野に入れ、転院も考えるべきか悩んでいます。
いくたウィメンズクリニック 生田 克夫 先生 名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986 年から体外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に導く。

担当医からは「あと3~4回は人工授精でも」と言われているようです。

人工授精は、6回行っても妊娠するのは1割か2割と確率的にあまり高いものではないので、長く続ける意味はないと思います。4〜6 回ほど行って結果が出なければ、次の治療に切り替えたほうがいいでしょう。
20代でも2〜3割の卵子には異常があり、36歳ですとその割合はもう少し高くなります。正常な赤ちゃんになる卵子が出てくる確率は加齢とともにだんだん低くなっていくので、1カ月に1個だけの卵子に期待して人工授精だけしていても塩梅が悪い。そうでなくても、出てきた卵子を卵管が拾い損なうこともありますから、いくら人工授精で良い精子が卵管の受精場所にたどり着いても、受精させる相手(卵子)がいなければどうにもなりません。卵子が確実に卵管まで来てくれていて、その正常率も高めるとなると、複数の卵子が得られるようにする必要があります。卵巣内で複数の卵胞が成熟してくれれば、排卵の準備ができた卵子の数も増えるので妊娠率も上がります。ですからそろそろ過排卵刺激の治療も考えられたほうがよいです。

人工授精と併用されている、シリンジ法についてはいかがでしょうか?

精液を採取して空の注射器に詰め、腟の中へ挿入する方法です。本来、腟の中はpH4〜4.5と酸性なので、精子のほとんどは死んでしまうのですが、排卵の時だけ、子宮の入口に中性のおりもの(頸管粘液)が増えるので、そこにたどり着けた精子だけが生きて子宮へ上がっていけるわけです。
また、性交渉によって女性も精神的な興奮度が高まってくると、腟からの分泌液が増えてきます。これもほとんど血液の成分と一緒でpH7.4と中性ですから、腟内の酸性度が薄まることで精子が長い間、生きていられるようになります。普通に性交渉を行って腟内がそういう環境になれば妊娠の可能性も高まりますが、酸性状態の通常の腟の中に精子を注入しても、よほど精子の数が多いとか、頸管粘液の量が多くなければ難しいと思います。

体外受精や顕微授精へのステップアップ、転院も考えられているようです。

まずは過排卵刺激の治療をしてみて、4〜5周期行っても結果が出なければ、体外受精も視野に入れられてもいいのではと思います。ご主人の精液所見に問題はないので、直ちに顕微授精が適応ではないと思いますよ。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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