不妊治療の保険診療制度が始まり、それを機に治療をスタートしようと考えているご夫婦も多いのでは?初めて病院を訪れた時、どんなことを聞かれてどのような検査をするのか、秋山レディースクリニックの秋山芳晃先生に詳しく解説していただきました。
高齢の人や婦人科疾患がある人は1年待たず早めの受診を
一般的に「1年以上夫婦生活をしていても妊娠しない」というのが不妊の定義と考えられています。しかしこの定義にとらわれず、30 代後半以上の方や、妊娠を妨げるような婦人科系疾患、たとえば子宮内膜症や子宮筋腫、生理不順などがある方は早めに病院へ行って相談されてもいいでしょう。
初診ではまず問診で、避妊しないで妊娠できない期間、今まで受けた不妊検査や治療歴、月経周期や生理痛の有無、ほかの科でかかっている疾患や既往歴の有無などについて伺います。
その後、妊娠が成立する機序や不妊の原因、一通りの検査などについてご説明。年齢や実質的に妊娠できない期間によっては、妊娠機序の説明のみにとどめる場合もあります。
不妊一般検査の費用合計は保険適用でだいたい2万円程度
次に検査についてご説明しましょう。不妊一般検査は不妊原因を探るためのスクリーニング検査で非常に重要なもの。おもな項目は以下のように女性の月経周期に合わせて進めていきます。
[卵胞期/月経~排卵前期]
・ホルモンの基礎値(脳と卵巣から出るホルモンを測定し、卵巣の予備能をみる)
・子宮卵管造影(卵管の通過性を調べる。造影剤を流すことで通りをよくする目的で行うことも)
・子宮鏡検査(子宮のポリープや子宮の奇形などの疑いがある時に行う)
[排卵期]
・卵胞ホルモン測定(排卵する卵子の成熟度を調べる)
・頸管粘液検査(排卵前に増えるおりものが分泌されているかどうか調べる)
・超音波による卵胞計測(排卵する卵胞の大きさを調べて、いつ頃排卵しそうなのか調べる)
・ヒューナーテスト(自然な性交渉で精子が子宮の中に入っているのかをおりものから調べる)
[黄体期]
・排卵の確認(卵胞がなくなっているかどうか、子宮内膜が排卵後の状態になっているかどうかを調べる)
・黄体ホルモン測定(高温相を維持し着床や妊娠を助けるホルモンを調べる)
・プロラクチン測定(排卵や着床を妨げ、流産の原因にもなりうるホルモンを調べる)
・子宮内膜症の腫瘍マーカー、貧血、生化学(コレステロール、肝機能など)検査
・インスリン抵抗性測定(BMI 30 以上の方、30未満でも排卵障害があり、ホルモン検査またはエコーで多囊胞性卵巣症候群が疑われる方)
[初診時・随時]
・基礎体温測定や甲状腺機能検査、クラミジア抗体検査など。
これらの検査は保険適用で受けることができ、検査料金を合計するとだいたい2万円弱くらいになります。
ほかに自費となりますが、できれば受けていただきたいのが精液検査や抗精子抗体検査、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査など。料金は施設によって異なりますので、希望される方は各施設にてご相談ください。
質問があったら看護師や受付に遠慮なく声をかけてください
初診時は可能であればご夫婦一緒に。情報共有ができますし、初診時に男性側の感染症検査などを実施する施設もあります。また、女性側は内診台での診察が予定されている場合、スカート着用が好ましいかと思います。
2周期程度の基礎体温表、基礎疾患や婦人科受診歴のある方はこれまでの経過や治療内容がわかるメモを持参していただくと、問診がスムーズに進むと思います。
初めての受診で不安に思われることがあるかもしれませんが、心配いりません。わからないことがあったら看護師や受付スタッフにも遠慮なくお声をかけてください。