着床障害と不育症 第4回 流産後は妊娠しやすい? 着床痛は本当にある?
インターネットやSNSには、妊娠にまつわるさまざまな噂があふれ、どれを信じればいいのかわからず混乱することも。最終回はレディースクリニック北浜の奥裕嗣先生に、ジネコ読者のなかでも、特に質問が多い噂について答えていただきました。
流産後は妊娠しやすいのですか?
流産後は妊娠しにくくなることもあります。
おそらく流産後に妊娠しやすくなるというデータはないと思います。反対に流産後は妊娠しにくくなることはまれにあるかもしれません。早期流産(〜妊娠12週)の処置方法には「手術療法(掻爬法・吸引法)」と「薬物療法」の3つがあります。なかでも掻爬法は子宮内に小さな金属製の器具を入れて赤ちゃんの組織を掻き出すので、手術後に子宮内膜が薄くなったり、感染症を起こして卵管閉塞につながることも考えられます。
当院は手術療法(吸引法)と薬物療法のどちらかをおすすめしています。吸引法は子宮内に柔らかいチューブを入れて組織を吸い出すので、子宮内膜が薄くなるリスクが少なく、早期に流産を解決できます。薬物療法はサイトテックRという飲み薬を使用し、子宮を収縮させて赤ちゃんの組織の排出をうながします。子宮内膜に触れないので、内膜の損傷や感染リスクがありません。一方で、服用後1〜7日で組織を排出するので、いつ出血するかわからないというデメリットもあります。仕事中に突然の出血が心配という人は吸引法を選択されています。ただ、妊活の再開が手術療は2回目の月経以降に対し、薬物療法は1回目の月経以降に可能になります。そのため、ほとんどの人が薬物療法を選ばれています。
「着床痛」は本当にあるのでしょうか?
着床痛は不明ですが、着床出血はあります。
着床期の「痛み」については、一時的に子宮が収縮して痛みを感じることがあるのかもしれませんが、着床とは関係ないと思います。着床期に「出血」がみられることはよくあります。受精卵が子宮内膜に穴を開け、根を張る時の出血と考えられ、自然妊娠や体外受精、胚移植の場合でも起こります。たとえば、胚移植では判定時期(4週目頃)に出血することがあります。着床期の出血を「悪い兆し」と思われている人も多く、妊娠判定が出ると驚かれます。私の印象では、妊娠判定が出る人の多くが着床期の出血を経験されています。医師からみれば「良い兆し」なのですが。
残念なのは出血があったからといって、なかには処方されていたお薬を自己判断でやめてしまう人がいることです。特にホルモン補充周期の人は、せっかく妊娠していても、お薬の服用を2〜3日休んでしまうと妊娠が継続できなくなります。当院では「出血があってもお薬を必ず飲み続けてください」とくれぐれもお伝えするようにしています。
つわりがあると流産しにくいのですか?
突然つわりがなくなっても注意が必要です。
つわりのはっきりした原因はわかっていませんが、受精卵が子宮に着床した時に分泌されるホルモン「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」や、精神的なものが関係しているといわれています。最初からつわりがなくても無事に出産される人はいますから、つわりはあってもなくても妊娠の継続に違いはないと思います。つわりがある人も12週以降には症状が治まります。
ただ、この期間に重いつわりが突然消えた場合は、子宮内で赤ちゃんが亡くなっているケースもまれにあります。ほとんどは心配ないので、あまり気にすることはありません。それでも不安を感じる時は、先生に心拍を確認してもらいましょう。
着床率を高めるサプリメントはありますか?
当院ではメラトニンが効果を上げています。
体外受精で受精卵の質に問題がある場合は、高い抗酸化作用のある「メラトニン」の摂取をおすすめしています。摂取のタイミングに決まりはありませんが、当院は体外受精をする人を対象に、前周期から摂取してもらっています。受精卵が胚盤胞になりにくい人が、受精卵の質や成熟率を上げる目的でメラトニンを服用してもらうと、次周期にきれいな胚盤胞ができることが多く、その効果に手応えを感じています。また、子宮側の着床環境の改善については、たとえば内膜の薄い人であれば、アスピリンを併用したりプラセンタ(ラエンネックR)や当帰芍薬散という漢方薬をおすすめすることもあります。