不妊治療に携わることになった理由やそれにかける想いなどをお聞きし、ドクターの歴史と情熱を紐解きます。
佐久平エンゼルクリニック 政井 哲兵 先生
不妊に悩む多くの方に一人でも多く、妊娠という喜びをお届けしたい
お医者さんってカッコいい 憧れから医師の道へ
――政井先生が医師、及び生殖医療に進まれたきっかけは何ですか?
「小6の時に足にケガをしてしまって10針ほど縫いました。そこで実際に自分の足が縫われていることに「すごい! お医者さんってカッコいい」と興味をもったのが医師を目指すきっかけです。
地元の大学の医学部に入学したのですが、「今、地元を離れないと今後ずっと出ることはないな」と思い、初期研修先を東京にして地元を離れました。当初は外科系を目指していたのですが、研修でお産を目の当たりにしてから興味をもち、産婦人科の道へ進むことになりました。当時の指導医がなかなか厳しい方でしたが、今になって思うと、あの時の厳しさは自分にとって必要だったのだなと思えます。
さまざまな病院で研鑽を積んでいたのですが、総合病院でお産も不妊も診ていくなかで「なかなかうまくいかない治療で悩んでいる不妊の方に、自分が何かできることはないか」と思うようになったのが生殖医療に舵をきったきっかけです。その後、体外受精のスキルを身につけようと、生殖専門のクリニックに入職しました。当時、排卵誘発で自然周期や低刺激でも体外受精を行っていることに衝撃を受けました。
大手にはない、うちだからこそできる患者さんに合わせた細やかな治療を
――開業への思いや診察で気をつけていることを教えてください。
「鹿児島出身ですが、長野は、県内の総合病院で勤務し、生殖医療へのターニングポイントとなった土地で、「第二の故郷」というか半分、地元みたいな感覚でした。この地で不妊に悩んでいる方の力になんとかなりたいという思いから、8年前に長野県佐久市にクリニックを開院しました。
開院のうわさを聞いた患者さんから「開院したらぜひ行きます」と声をかけてもらったり、地元の方に温かく支えられて、ここまでこられたと思っています。
私のクリニックの存在意義を考えた時に、大手の病院のような業務がマニュアル化された感じではなく、小さなクリニックらしく、それこそ患者さんの背景や状態に合わせたオーダーメイドのようなきめ細かな治療を行っていきたいと思っています。それが、うちのクリニックの強みですね。たとえば、外来診療だけだとなかなか時間が足りないので、事前にメールで治療方針の相談に答えたり、また直接会って話したほうがいい内容であれば、午後改めて時間をとるようにしています。このように患者さんとしっかりコミュニケーションを取りながら、種々のご要望に応えていきたいと思っています。
また、医師やスタッフによって患者さんに対して言うことが違っていると不信感にもつながるので、スタッフ間でしっかりと情報共有するように努めています。
患者さんの話をしっかりと聞きニーズと期待に応えていきたい
――今後取り組みたいことやチャレンジしたいことはありますか?
「地元の方に、信頼してもらえるクリニックにしていきたいです。その分、私自身含めスタッフもその思いにしっかりと応えていかないといけません。
新しい設備や技術面でも、いいものがあれば、まずは導入してみようと考えています。
今回、日本産科婦人科学会のPGT -A(着床前胚染色体異数性検査)施設の申請を提出しました。都心部では認定施設が増えていますが、長野県ではまだ施設がありません。認定を受ければ、胚の着床前診断を県内で初めて受けられるようになります。
不妊治療はすべていい結果が出るわけではありませんが、患者さんに最善の「答え」を出すべく、今後もスタッフ一同取り組んでいきたいと思います」