【Q&A】顕微授精~矢野先生

花みずきウィメンズクリニック吉祥寺
院長 矢野 直美 先生

東京大学医学部医学科、東京大学大学院医学系 研究科博士課程卒業。武蔵野赤十字病院、帝京 大学医学部附属溝口病院、東京都老人医療セン ター、池下レディースチャイルドクリニック、池下 レディースクリニック広小路勤務を経て、2009年、 池下レディースクリニック吉祥寺院長に就任。体 外受精はすべて院長が担当。少数精鋭のスタッフ で、一人ひとり丁寧に診ることを心掛けている。
2022年7月より名称が「花みずきウィメンズクリニック吉祥寺」に改称。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
まりかさん (40歳)  
37歳で結婚し、自然妊娠しないため、39歳から不妊治療を始めて1年経過します。
1回目カウフマン療法。採卵では4個採卵しましたが1個しか育たず、凍結移植するも着床しませんでした。
2回目はショート法。採卵12個、8個受精しましたが3個しか育たず、3回とも凍結移植するも不成功でした。
今の主治医からは、40歳という年齢もあり、回数を重ねるしかないと言われましたが、このまま治療を続けて妊娠できるか不安です。
また、不妊治療を始めてから、以前は5日間だった月経が3日間程度と短くなり、月経量も以前の終わり3日分程度とだいぶ少なくなっ
ています。主治医からは、子宮内膜は7mmあるので問題ないと言われましたが、これも不妊の原因ではと不安です。
40代で不妊治療を始めた患者様の多くが焦りや不安を抱えておられることと思います。
年齢とともに受精卵の質は低下し、染色体異常が増えていくため、統計上は妊娠に至るのに必要な卵子数は40歳では15個以上、42歳では24個以上とするデータもあります。

年齢的に妊娠率が低下している状況でどのようにしたら効率よく妊娠に至ることができるのでしょうか。
医療機関によっては、採卵を連続して行いできる限り凍結胚を貯めていってから胚移植を始めるというような選択肢を提示されることもあるかと思います。
さらにそれらの胚に染色体異常がないか着床前診断をすることを勧められるかもしれません。
並行して着床障害の因子が検査を行なうのであればERA検査、EMMA ALICE検査あるいは子宮内膜フローラ検査、Th1/Th2検査等々…
但し、これらの方法は保険適応とならなず、ひとつひとつが決して安くはありません。この春から始まった保険適応になる要件をみますと、回数制限は移植のところにしか書いてありませんが、凍結胚が明らかに残っている状態で新規の採卵を保険ですることは認められていません。
凍結胚を貯めていくとなると、排卵誘発から凍結までの全てを自費ですることになります。
着床障害についての検査は以前も現在も保険適応はなく、採卵から凍結までの一連の治療と別に自費ですることになります。

着床前診断は、胚移植が2回連続して不成功であれば、日本産科婦人科学会の臨床研究に登録して行うことはできますが、これもまた排卵誘発から凍結、着床前診断、移植など全て保健適応外とになります。

現在の保険診療制度を冷たいと感じる方もあるかもしれませんが、保険適応となる医療には十分な有効性と安全性についてのエビデンスが求められます。

保険適応となっていない検査や治療は、まだその点が不十分であるものとなります。
癌治療でも夢の新薬と言われるようなものも、癌の組織型や遺伝子診断などで適応となる場合しか保険適応とならないなど、他の分野の医療でも同じことです。

現在、先進医療として認定されている検査や治療は、あくまでも自費で行うことになっており、今後数年を経て、保険適応となるものと、保険適応にはできないということで終了するものとに振り分けられることになります。

40〜42歳の方が胚移植を保険診療でできるのは3回までです。
まず2回あるいは3回までは、着床障害の検査も並行して行いながら、体外受精自体は保険適応でできる範囲内で行ってみては如何でしょうか。


今後の生殖補助医療は自費でしかできないとなった場合、着床前診断も視野に入れて不妊治療を継続するのか、あるいは不妊治療から一旦離れて、お二人での人生を進む、あるいは特別養子縁組という選択肢もあります。
ご夫婦でよく話しあい、納得のいく道を進んでいただければと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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