【Q&A】子宮内フローラ検査について~蔵本先生

蔵本先生に質問してみました。

蔵本ウイメンズクリニック 蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990年オーストラリア・PIVET メディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。久留米大学医学部臨床教授。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

大ちゃんさん(36歳)

体外受精で移植を2回実施し、hcg0.1以下でした。
2回移植して着床しなかったため、主治医より、子宮内フローラ検査の提案を受けました。
この検査は、抗菌薬を服用しても改善しない人が一定数いると説明を受けました。
私自身、過去にフロモックスとホスミシンでアレルギー反応が出ており、使用できる抗菌薬の制限があります。
子宮内フローラ検査を受ける必要はありますでしょうか?
検査を受けたら、数ヶ月間は移植はできないようですし、改善しない人も一定数いるとのことで、悩んでいるところです。
数ヶ月移植ができないようであれば、貯卵のために先に採卵をしておくほうが良いかも悩んでいるところです。
また、7~8ヶ月程度前に子宮鏡検査を受けたところ、マイクロポリープがあり、その場で切除していただきました。病理検査への提出や抗生物質の服用もありませんでした。
子宮鏡検査を受けてから日が経っていることもあり、再度受ける必要があるのであれば、子宮内フローラ検査と子宮鏡検査はどちらを優先したらよいでしょうか?
子宮内フローラ検査を受けるメリット・デメリットを教えていただければと思います。
胚移植 2 回行い、妊娠しなかったとのこと、反復着床不全と言って良いでしょう。
着床不全の原因にはいくつかあり、一番多いのは卵子、胚の問題で、形態の良い胚が得られない場合、胚染色体の数的異常がある場合等があります。胚質不良なら卵巣刺激や培養液の変更等を検討します。胚染色体数異常を調べるには PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を行い、染色体数の正常な胚を戻します。PGT-A は現在、全額自費診療となり、検査できるのは認定施設のみです。
次に、内膜の着床環境の問題です。以前、子宮鏡検査でマイクロポリープを認めたとのことですが、マイクロポリープは慢性子宮内膜炎の所見の 1 つです。黄体期に内膜が7mm 以上になったところで EMMA/ALICE(子宮内細菌叢検査)を行い、病的細菌の有無や善玉菌であるラクトバチルス菌が少ないか調べます。善玉菌が少ないなら、ラクトバチルスのカプセルを膣内投与します。EMMA/ALICE を行うと約 25%が異常を認めます。病的細菌があれば有効な抗生剤を使用し、これにより妊娠率が改善します。大ちゃんさんは抗生剤の使用制限があるようなので、抗生剤を使用する際は担当医とよくご相談されて下さい。
さらに、着床の時期(着床の窓)を調べる ERA(子宮内膜着床能検査)を行うと、胚盤胞移植時期が適切だったかどうかが分かります。EMMA/ALICE と ERA は併せてEndomeTRIO と呼ばれます。これらの検査を同時に行うには、胚移植を行う時と同じホルモン補充を行い、子宮内膜を厚くさせ、内膜が 7mm 以上になれば検査日と検査時間を決め、逆算して 120 時間前(5 日前)からプロゲステロン膣錠を挿入し、特殊なカテーテルで子宮内膜を一部採取します。結果は 3 週間で出ます。先に述べましたがEMMA/ALICE で異常を認めれば、服用できる範囲で治療します。ERA で「着床の窓」にズレが見られれば、次回の胚盤胞移植は ERA の時と同じエストロゲン製剤とプロゲステロン製剤を使用して、着床時期のズレに合わせて胚移植します。
子宮内フローラ検査(当院では EMMA/ALICE)のメリットは、子宮内膜の細菌環境に異常があれば、着床不全や妊娠しても流産の可能性があるため、それを治療することで着床環境を改善できることです。EMMA/ALICE と ERA は先進医療で、保険治療と併用できる自費診療です。ご心配でしたら子宮鏡検査を再度行い、マイクロポリープが認められれば慢性子宮内膜炎の可能性があるため、EMMA/ALICE をされたら良いでしょう。ただし、保険診療と併用して先進医療を行うことができるのは、生殖医療専門医が在籍し各地方厚生局から先進医療の認定を受けた施設のみとなります。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。