【Q&A】不育症検査でひっかかりました~中村 嘉宏 先生

不育症検査で思いがけない結果により困惑し、今後の治療や、今まで続けてきた習慣などに迷いや不安が出てきますよね。

なかむらレディースクリニックの中村嘉宏先生に医師の立場から教えていただきました。

なかむらレディースクリニック 中村 嘉宏 先生 大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
 hanaさん  (41歳)       2年前、違う病院で11個採卵(高刺激)し、5日目で4aaが2つ、3aaが2つ、3ab胚盤胞、初期胚と全部で6個凍結保存。
その後1番良い卵から順に移植しましたが、1回目9週目流産、2回目も9週目流産、3回目は化学流産(ヘパリン注射)、4回目は陰性(漢方併用)となり、2回目の流産後、不育症検査で第12因子欠乏因子に56%でひっかかりました。胚盤胞
4回目辺りから現在まで漢方薬を服用しています。
今年1月に低刺激で6個採卵し、体外受精顕微授精を行い、3bc、3cc(7日目)の2個の胚盤胞を凍結保存中です。
次の周期で再度採卵するか、移植するのかどちらがよいのでしょうか?
現在8ヶ月ほど漢方薬を服用していますが、効いてない気がします。
また過去の移植周期のホルモン補充療法の薬と合わないのか併用時に吐き気があり、高温期がなかなか下がりませんでした。
漢方薬をやめるべきなのでしょうか?
良い卵ができる、妊娠を継続できると言われ信じて漢方を続けてきましたが…。
今後今の病院でこのままの治療で良いのか、また他の検査なども行ったほうがよいでしょうか?

人間の血液中には、血液を固める因子と固まるのを阻止する因子とがバランスを保って存在しています。そのため、血液は血管内では固まらずに済み、出血などの場合は血液が固まって出血を止めるのです。

第ⅩII因子もそれらの因子の一つです。第XII因子が欠乏すると血が固まりやすくなり血栓(血の塊)ができやすくなります。血栓が、赤ちゃんの臍帯などの血管を詰めてしまい流産の原因となる可能性があります。そのため、第XII因子の活性が低下すると流産の原因となることが考えられるのですが、実はXII因子の活性の低下が流産の直接の原因なのかどうかはわかっていません。諸外国を含めた多くのガイドラインでは、関係がない、あるいは検査の必要がないとしています。

その部分も踏まえて主治医の先生としっかりと相談し、どこまで治療を行うかを決定していただければと思います。

漢方薬についてですが、有用性についてはしっかりとしたエビデンスがないと思います。効いてないような気がする、あるいは吐き気が出るのであれば、やめてしまう方がいいです。漢方薬をいろいろ飲むより、体外受精を一回受ける方が何十倍も妊娠の確率が上がります。

次に採卵をするか移植をするかですが、現在凍結している胚盤胞のグレードが少し低いので、年齢を考慮して採卵を優先してもいいかもしれません。また、採卵をするのであれば、受精卵の染色体数に異常があるかないかを調べるPGT−A(着床前染色体異数性検査)を行うことも考慮してください。

流産の多くは偶然に起こる受精卵の染色体数の異常です。染色体数の異常は年齢とともに確率が高くなります。41歳の方であれば、胚盤胞まで発育しても、4個のうち3個の胚盤胞に染色体数の異常があるといわれています。2回の流産、1回の化学流産も染色体数の異常が原因である可能性が高いと考えられます。

PGT-Aは、胚盤胞の胎盤になる部分から細胞を五個くらい採取して染色体数を調べる検査です。幸い、相談者さんは卵巣機能がよく胚盤胞到達率もいいので検査に適していると思います。PGT-Aは現在、臨床研究として行っています。PGT-Aを行う場合には、夫婦染色体検査が必要となります。

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