ご主人を愛しているなら、 子づくりはげんじゃえ

田村秀子先生の 心の 玉手箱Vol.36

これまで非協力的だったご主人か ら「子どもをつくりたい」と思い がけない言葉が。

子どもをもたな い人生を考えていた矢先で、迷わ れているそうです。秀子先生にお 聞きしました。

田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。 1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したことを機に義父の経営する田村産 婦人科医院に勤め、1995年に不妊治療部門の現クリニックを開設。

妊娠力には限りがあります。 5年、 10 年先の 自分を想像してみて

「子どもが欲しい気持ちにけりをつけてしまった」というのは、「もう絶対子どもは欲しくありません」ということではないんですよね、きっと。諦めるためにお子さんをもたない人生を考えるようになって、キャリアアップをめざしている最中だから、今は仕事が面白いのでしょう。

私たちはあなたと同じように「もう子どもは諦めます」と治療をやめられた方が、 42 歳を過ぎたころに「もう一回だけやってみたい」と治療再開する姿をたくさん見ていますが、そんな時、とってもやるせない気持ちになるのです、あの時治療を続けていたら…と。

女の人の妊娠する力には限りがあるんです。いまは 33 歳と若くて、努力すれば妊娠できる年齢だから、自分の意志で「諦める」という選択ができているんですね。でも、5年、10 年後…と年齢を重ねてくると、「欲しい」という気持ちに反比例するように妊娠率は下がります。たとえ流産とはいえ妊娠できたあなたは出産まで行ける可能性のある方なんだと思うのです。だからこそ、ご主人のことを愛していらっしゃるなら、過去は水に流して今しかできない子作りをもう一度トライするのもありだと思いますよ。

男性にとって精子の問題は 女性が考える以上に ダメージは大きい

本当は、最初に流産してお子さんが欲しかった時に、ご主人が協力してくださっていればよかったんだろうと思います。ただ、ご主人の立場になってみれば、非協力的だった理由はいくつかあって、仕事が面白い年齢だったこともその一つでしょう。そのうえに、「子どもをつくる」という大きな責任が出てきても、男性機能に自信がもてなかったら拒否したくなるのもわかります。

子どもをつくるということに関していえば、男の人は射精という役割しか与えられていない受け身な存在です。だから女の人が考えている以上に、男の人は「精子が少ない=男を否定された」という感覚が強いんですね。

ご主人には、自分に原因があるとわかって立ち直るまでに時間が必要だったはずです。そして、そのダメージを数年かけて自分の中で消化して、「やっぱり子どもをつくる努力をしよう」と決意されたわけでしょう。そこは理解して差し上げてほしいですね。

与えられた機会を大切に 後悔しない選択と 今できる努力を

もちろん、子どもをもたない人生を否定しているわけではないんですよ。ご主人が何をいおうと、「私は子どもが欲しくありません」と強く思うのであれば、その理由をきちんと伝えてご主人を説得されるといいと思います。ただ、「あなたが協力しなかったから諦めたのよ」というのは理由になりません。それでは子どもをもたない人生を選択したことを他人のせいにしているだけ。ご主人はもちろん、ご自分すら納得させることはできませんよね。ご主人に対して「今さら勝手じゃない」と、しっぺ返しをしたくなる気持ちはわかります。でもご主人が「子どもをつくろう」と言ってくれたことで、また選択肢が広がったんですよ。

今のままの選択で、夫婦が納得して二人だけの老後を過ごすことができているのか?

お互いの 60代、 70 代になった姿を想像しながら、自問してみることも必要ではないでしょうか。

秀子の格言

「ご主人を愛しているなら、 子づくりはげんじゃえ!って 思いますよ」
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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