不育症の検査について

Dダイマーの数値が上がり、 不育症検査をすすめられています

松本 由紀子 先生 2001年、浜松医科大学医学部卒業。岡山大学医学部産科婦人科 学教室へ入局。その後、神戸掖済会病院、岡山済生会総合病院、姫 路赤十字病院で勤務。2007年9月より英ウィメンズクリニック勤務。 2012年8月より不育症センター所長、総合医療部門部長、臨床遺伝 専門部長に就任。2013年3月より英ウィメンズクリニック副院長。
みなはさん(32歳)からの相談 Q.以前顕微授精のために採卵をしました。その際、Dダイマー が上がってしまい、初めは標準より少し高い0.7μg/mlだっ たのですが、徐々に上がってきて最高で1.6まで上がりま した。今は標準に戻りましたが、標準まで下がるのに1カ月 弱かかってしまったので、念のため不育症の検査をすすめら れました。値段が4万円するのと、先生もどちらでもよい ですよ、とのことなので迷っています。来月末に移植予定 なのですが、この場合移植する前に不育症の検査をしたほ うがよいのでしょうか。ちなみに4年前に1人出産をして いますが、流産の経験はありません。よろしくお願いします。

D ダイマーとは、どのような検査ですか。

松本先生 血管の中で血液の固まりができ、血管が詰まってしまうことを血栓症といいます。排卵誘発では血栓症を発症する可能 性が高まることがあるため、採卵前後に Dダイマーなどを測定し、血栓の有無を調べ ることがあります。 D ダイマーとは、血栓ができて分解される時に産生されるもので、 血栓が体内にあれば D ダイマーが高い値を示します。

血栓症になると、不育症になる危険性があ るのでしょうか。

松本先生 妊娠初期の流産の原因の約 80 % は、胎児(受精卵)の偶発的な染色体異常とされていますが、反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の場合には、そのほかに流産のリスクを高めるリスク因子があるとされてい ます。夫婦の染色体異常、子宮形態の異常、ホルモン分泌の異常と並んで、不育症のリスク因子とされているのが「凝固異常」で、血液が固まって胎盤に血栓ができやすくなる状態です。このような状態では胎児に栄養が運ばれず、流産や死産を繰り返したり、胎児の発育異常や胎盤の異常をきたしたりすることがあるのです。 D ダイマーが高いということは、その凝固異常を疑います。

みなはさんの検査結果から、どのようなこ とがわかりますか。

松本先生 主治医のおっしゃる内容からす ると、こちらの病院で測っておられる患者さんのなかでは、みなはさんは D ダイマーの数値が高いグループに入っているようですね。ただし、 D ダイマーの数値は今回どういう誘発方法をしたかにもよると思います。たとえば卵巣が腫れていて、 OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になり、卵子もたくさん採れている状況なら血栓ができやすいのです。そういう状況では、卵巣の腫れが引くのにも 1 カ月ぐらい時間のかかることがあります。

不育症は、 1 人産んでおられる場合でも診 断されることがあるのでしょうか。

松本先生 不育症とは、 2 回以上連続して流産・死産を繰り返してしまうことなので、 出産の既往は関係がありません。 4 年前のご出産とのことで、時間も経ち体質も変わ る可能性があります。加齢もあるので、絶対に大丈夫だとは言えないのです。

不育症の検査は受けたほうがよいですか。

松本先生 まず、主治医にご自身がどのぐらい不育症のリスクがあるのかをもう少し詳しく尋ねられてはいかがでしょうか。リスクが高いようならば、 4 万円をかけてで も検査をされたほうがいいと思います。
  また、不育症検査も全項目を受けなくても いいかもしれません。お一人出産されているので、子宮形態異常やご夫婦の染色体異常の項目の必要性は低く、疑わしい凝固異常の項目だけを選んで受けられたら費用はそこまでかからず、リスクは減るので、そういう方法もあるのではないかと思います。先生がどれを一番疑って心配されているかにもよるので、よく相談してみてください。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。