TSHが高い場合、体外受精は?

Q TSHが高値。このまま 体外受精に進んでいいの?

神谷 博文 先生 札幌医科大学卒業。同大学産婦人科学講座、第一病理学講座に入 局後、斗南病院にて産婦人科科長を10年間務める。1998年、神 谷レディースクリニックを開業。
なぎさん(31歳)からの相談 Q.不妊歴6年。不妊治療は始めたばかりです。体外受精を 行うにあたって、血液検査をしたところTSH(甲状腺刺 激ホルモン)が8.283mIU/mlと高値でした。甲状腺ホ ルモンはFT3が3.26ng/dl、FT4が1.44ng/dlで正 常です。TSHが高いと移植はしない病院もあるそうです が、主治医から説明がないまま不妊治療に進み不信感を 抱いています。症状は不眠や体重減少、疲れやすく、冷 えが気になります。TSHが高いとわかるまでは鉄サプリと ビタミンCサプリを服用していました。私のような場合は、 薬などでコントロールしたほうがいいのでしょうか?

TSHが高いそうですが、TSHとはどう いうもので、高値であることはどんな状態を 意味するのでしょうか?

神谷先生 TSHは甲状腺刺激ホルモンのこと。脳下垂体から分泌され、甲状腺を刺激する作用があります。脳下垂体は、甲状腺ホルモンの量が足りないと、TSHを分泌して甲状腺を刺激します。逆に甲状腺ホルモンが多い場合はTSHの分泌を抑えます。つまり、TSHの値によって甲状腺ホルモンの分泌量 がわかります。

なぎさんはTSHが8・283μIU/ ml と高 く、甲状腺ホルモンのFT3(トリヨードサイロニン)とFT4(サイロキシン)は正常値。これは、「潜在性甲状腺機能低下症」と呼ばれる病態。甲状腺ホルモンを出すために、脳下垂体が過剰に頑張っている状態です。

TSHが高値のまま、体外受精に進んでい いのでしょうか?

神谷先生 甲状腺ホルモンは基礎代謝に重要な働きをするもので、値が低ければ流産や早産、胎盤早期剝離などが増加するおそれがあります。また、胎児や産まれた赤ちゃんの精神・神経系の発達にも影響します。

このように、甲状腺ホルモンの量は胎児に影響しますから、TSHを 2.5μIU/ ml 以下 に保つようにすることが非常に重要です。なぎさんのようにTSHが8μIU/ ml 以上の 場合は、甲状腺ホルモン剤のチラーヂンⓇの投与を、まずは 50μgくらいから始め、TSHを 2.5μIU/ ml 以下にしてから不妊治療をス タートするのが常識です。

  ただし、注意したいのはほかの病気が隠れ ているケース。たとえば、橋本病だった場合、妊娠すると甲状腺機能がより大きく低下しま す。橋本病は自己免疫の異常が原因ですから、自己抗体を測定し、その結果、自己抗体があ れば1〜2カ月ごとに検査を行って、ホルモン値を厳しく管理する必要があります。一度、甲状腺の専門病院で検査を受けるといい でしょう。

不眠や体重減少、疲れやすさ、冷えなどの 症状も気にしていらっしゃるようですが、TSHの高値とは関係ありますか?

神谷先生 甲状腺ホルモン値は正常ですから、これらの症状とTSHの高値は直接関係しているわけではありません。

鉄分サプリメントの服用もやめる必要は ありません。鉄剤は腸管からのチラーヂンⓇ吸収を阻害する働きがありますが、チラーヂ ンⓇは寝る前や早朝などの空腹時に服用し、鉄サプリは時間をずらして服用すれば問題ありません。なお、ヨードを多く含む昆布、昆布しょうゆ、昆布だし、めかぶなどを過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンがつくられなくなり、甲状腺機能低下症になることがありますから控えめに。ヨードを含むうがい薬も避けたほうがいいでしょう。

  なぎさんは、まず、専門病院で甲状腺の病 気がないか、チェックしてもらうことをおすすめします。まだ 31 歳と若いですから、体の 状態を確認し、病気があれば治療をしてからの不妊治療でも遅くはありません。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。