〜妊活中から始める母体管理〜

妊娠がゴールではなく、母子ともに元気で出 産することが最終目標。

産科に移る妊娠12 週まで診察する「生殖周産期外来」を新設 した、俵IVFクリニックの俵史子先生が今か ら知っておきたい妊娠初期のリスクや母体管 理の重要性についてレクチャーします。

 

俵史子先生 浜松医科大学医学部卒業。2004年愛知県の竹内 病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、 俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移 転、リニューアルオープン。同院の「生殖周産 期外来」は妊娠初期の方が通うので、不妊治療 とは別のフロアに設ける配慮がされています。 4週に1回の通常の妊婦健診と異なり、週1回 赤ちゃんも超音波で確認できるので安心!

ポイント

過体重や血圧が高い人は 妊娠前から、さらに妊娠後も 気を緩めずにきちんと 管理していくことが大切!

過体重、高血圧、甲状腺の異常や糖尿病な どの疾患がある方のほか、年齢が高い方も 妊娠中の母体や赤ちゃんへのリスクが高まり ます。

自分にはどんなリスクが考えられるか、 妊娠前から正しい知識を得ておきましょう。

妊娠前や妊娠初期の管理で 妊娠中や分娩時のリスクが低下

2007年の開院以来、当院では妊娠率の向上はもとより、お母さんの健康や元気な赤ちゃんの誕生、その後の健やかな成長を見据えた安全な不妊治療を提供することに力を注いできました。

分娩を扱う医療機関に協力を依頼し、当院での生殖補助医療を経て妊娠された方の妊娠・分娩の予後調査を行い、不妊治療の経過や背景因子と妊娠中の異常や胎児の状態との関連に焦点を当てた観察も行っています。

およそ 10 年間の集積データから明らかになったこと は、妊娠前または妊娠初期からの生活習慣の見直しや体質改善が、その後の妊娠経過や分娩における異常発生のリスク低下につながるということです。

不妊治療を受けて妊娠されるとそれが大きなゴールで、その後の出産は普通にできるはず、と思っている方が多いようです。

なかには「不妊治療をして胎児に異常は出ませんか?」など、漠然とリスクを感じている方もいますが、それは赤ちゃんについてのリスクが主で、妊娠経過や妊娠後の母体に生じる合併症に関して不安を抱いて質問をされる方はほとんどいません。不妊治療に関しての知識はたくさんおもちでも、妊娠後の母体や分娩時のリスクについてはまだまだ認識が低いのかもしれませんね。

これまでは妊娠7週や8週で当クリニックを卒業し、産科の施設への転院手続きをしていたのですが、その後に流産してしまう方もいました。施設を移ってしまうと、何が原因で流産してしまったのか、こちらではなかなか究明できないことがあります。不妊治療をしたことが影響しているのか、それとも不妊だったその人自体に何か問題があったのか、もしくは妊娠時の管理が良くなかったのか。現状では原因ははっきりわかっていないので、そこをもっと突き詰めて調べていきたいとずっと考えていました。

また、妊娠初期というのは胎盤が形成される大事な時期なのですが、そういった時期、もしくは妊娠前からしっかり生活習慣指導などをして母体を管理すれば、正常な胎盤の形成、ひいては赤ちゃんの予後の改善にもつながっていくのではないかと思っています。

妊娠という目的を遂げる、元気な赤ちゃんを産むというのは考えられていても、「安全な妊娠生活」と「安全な出産」というのは意外に抜けている部分なのではないでしょうか。産科のある施設にお送りするまでの間、しっかり診て抜けている部分をフォローし、データを蓄積していくことで今後の不妊治療にも役立てられるのではないかと考え、当院では「生殖周産期外来」という科を設け、周産期専門医が担当することになりました。

外来受診の対象となるのは当院での治療による妊娠が成立し、胎児心拍確認後から妊娠 12 週頃までの方。 一般不妊治療で妊娠した方も受診できますが、やはり体外受精や顕微授精を受けた方が多く、現在は全体の半数くらいの方が受診されています。

心拍確認後から妊娠 12 週まで 体重や血圧などをしっかり管理

診察の内容は超音波検査で初期の胎児の状態をチェックするほか、体重や血圧管理、生活習慣指導も重要な項目としています。体重過多の人は不妊になりやすいので妊娠前からも当院では厳しく指導していますが、それが妊娠したら終わりではなく、妊娠後も妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を防ぐために引き続き管理をしていきます。

また、血圧が高い、甲状腺異常や糖尿病などの疾患がある人は妊娠初期段階も適切なコントロールが必要です。明らかな異常がなくても、異常に近い数値の方たちも不妊治療の段階から管理して、妊娠後も観察していきます。

さらに最近、胎児の染色体異常を調べるNIPT(出生前診断)を希望する方が増えてきていますが、7週、8週だとそのようなお話も相談できずに転院して、よくわからないまま自己判断で検査を受けるという人も。当院では生殖周産期外来に通うことでゆっくり考える時間を設け、遺伝カウンセリング外来でも話を聞くことで、納得して検査を受けられるような形をとっています。

高齢で妊娠する方が増加している傾向がありますが、その分、どうしても妊娠中や出産時のリスクは上がってしまいます。

長期間不妊治療を受けてやっと妊娠となっても、それが最終ゴールではありません。1つステップを上がったら、今度は妊娠後、自分にどのようなリスクがあるのか、正確な情報を知ることが大切です。リスクがあったら、それを低減できるように自分の体をきちんと管理し、対応できるものに関しては適切な治療を続けていくことが必要です。

現在、当院の生殖周産期外来ではデータを蓄積しているところです。ある程度集まったら、まずそれを医療機関で情報共有し、将来的には患者さんにも勉強会という形で、妊娠前から知識をつけていただくことを目標にしています。

俵史子先生の生殖周産期の最新記事

>全記事がドクター編集!

全記事がドクター編集!

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。