“妊活”は、ヘルスチェックから!

「妊活(にんかつ)」=不妊治療、と勘違いしてはいませんか。

「赤ちゃんが欲しい」 と願うなら、まずは夫婦で話し合って協力し、妊娠についての正しい知識を身に着け、 妊娠しやすい状態へと積極的に体を整えることが第一歩。

医師に委ねるだけではなく、 自らの健康管理や生活習慣を見直すことも、「妊活」においては大切なことです。

コウノトリに「来てほしい!」と思ったときにタイミングよく来てもらえるよう に、今自分自身でできること、しておくべきことを、ともに埼玉県さいたま市で 不妊治療を行っているお二人に伺いました。

“妊活”は、ヘルスチェックから! ~妊娠のために、 今自分でできることとは?~

柏崎 祐士 先生 京都府立医科大学医学部卒業。2000年ま で日本大学板橋病院で主に不妊治療に従事 し、その間、米国エール大学医学部産婦人 科で研修。その後、「かしわざき産婦人科」 副院長に。日本生殖医学 会生殖医療専門 医、日本産科婦人科学会認定医。
秋山 芳晃 先生  東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医 科大学附属病院、国立大蔵病院に勤務後、 父親が営んでいた産科医院を継ぎ、不妊 症・不育症診療に特に力を入れたクリ ニックとして新たに開業。

定期的な検診で 健康チェック 体重管理も若いうちに

秋山先生は、大宮医師会(さいたま市)の理事でもあります。自治体では「妊活」、または女性の健康をサポートする取り組みはありますか。

秋山先生 妊活に特化したものではありませんが、「子宮頸がん検診( 20 歳から 5 年ご と)」、「乳がん検診( 40 歳から 5 年ごと)」 の無料クーポンを配布しています。

どちらの検診も、近い将来に妊娠を望まれる女性なら特に受けておいたほうがいいでしょう。

どの病気にも当てはまりますが、早期発見・早期治療が肝心。

婦人科系の疾患があると、どうしても不妊治療は後回しになってしまいますから、こうした無料検診は賢く利用していただきたいですね。

各市区町村でも取り組んでいるはずですので、お知らせは見逃さないでください。

さらに、「ヘルスチェック( 18 ~ 39 歳)」 も無料で受けることができます。

一般的な健康診断ですが、保健センターとも連携していて、コレステロール値や血糖値が高い、肥満傾向にあるなど、何らかの気がかりがある場合には、希望すれば無料で保健指導を受けることができます。

柏崎先生 妊娠を希望されるなら、ぜひともその前に肥満は解消しておいていただきたいですね。

肥満そのものは病気ではありませんが、多くの病気の引き金になることは確かで、不妊のリスクも約 2 倍になります。

運良く妊娠されても、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、血栓症など、母体や胎児の命を脅かすほどの合併症リスクも明らかに高くなります。

とはいえ、過激なダイエットも不健康ですから、体重管理は若いうちから心がけていただきたいものです。

秋山先生 柏崎先生はお産も手がけていらっしゃるので、切実ですよね。

当院では、妊娠された患者さんには産院をご紹介していますが、肥満傾向にある妊婦さんをお取り次ぎする際には、「なぜこの患者さんの妊娠をサポートしたの !? 」と、お叱りを受けることも。なかには、受け入れを拒否される病院も少なくありません。

産科や新生児科の先生方、何よりご本人と赤ちゃんの負担を考慮すると、「この方の不妊治療を引き受けるべきか」と悩むことすらあります。

肥満も、やせすぎも、健康的ではありません。

若くて時間的に余裕のあるうちに、できるだけ適正体重に近づけるよう努力していただけるとありがたいですね。

ワクチンで防げる病気は、 予防接種を受けて防ごう

自治体のサポートは良心的と思いますが、受診率はいかがでしょう?

秋山先生 増加傾向にはありますが、それでも昨年度の「子宮頸がん検診」では平均で 11 %。

「ヘルスチェック」では、6・5% です。

もったいないですよね、自治体からの補助があるので気軽に受けていただきたいのですが。

一生懸命に頑張る女性ほど、不健康な生活になりがちです。

柏崎先生 ご結婚前にブライダルチェック(子宮がん・卵巣がんの検診、卵巣年齢診断・風疹抗体・肝炎の有無など)を受ける方も多くなってはいますが、できるだけ若いうちから意識を高め、「赤ちゃんが欲しい」と思った時のために備えていただきたいですね。

女性には月経があり、月経は健康のバロメーター。重い生理痛、遅れや無月経、異常出血などは病気のサインであることも。

放置せずに、ぜひ気軽に婦人科を訪れてください。

若いうちからかかりつけの婦人科をもつことも、その後の妊活には大いに役立つと思います。

秋山先生 ほとんどのブライダルチェックの項目に含まれる子宮頸がんや風疹は、ワクチン接種で予防することが可能です。

これらの接種もぜひ、妊娠前にご検討いただきたいですね。

風疹や流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の予防接種などは、男性側も受けておくといいでしょう。

風疹の抗体検査も、自治体の助成があります。

柏崎先生 子宮頸がんは、性交渉を介して感染するHPVウイルスによって発生することがわかっています。

予防接種によって同じウイルスによる尖圭コンジローマなどの病気も防ぐことができます。

秋山先生 HPVワクチンをとりまく現在の環境を考えると積極的にお勧めするのは難しいですが、初めての性交渉が若年齢化していることを考えると、個人的には中学生、小学校高学年からワクチン接種を検討したほうがいいと思います。

私の娘は現在11 歳ですが、この春の接種を検討していま すし、病院の女性スタッフのお子さんたちもすべて接種していますよ。

院内にも、啓蒙用の無料パンフレットを置いています。

柏崎先生 もし、予防接種をためらわれるのであれば、なおさら定期的な検診は必須です。

自治体の無料検診と保険適用の治療は併用できますから、生理の異常で婦人科を訪れる際に“ついで”に診てもらうことが 可能です。

「忙しいから」を言い訳にしないで、ご自分の体と向き合う機会を増やしていただきたいと願っています。

ストレスは万病のもと! 夫婦仲良くセックスレス解消も

サプリメントや生活面などで、妊活に役立つアドバイスがあればお願いします。

秋山先生 サプリメントは、妊娠初期には葉酸摂取をお勧めしますが、妊娠前ならきちんとした食事をしてさえいれば、それほど必要はないと思います。

冷え性などは東洋医学の考え方で、西洋医学の医者としては何ともコメントしづらいんですよ。

柏崎先生 よもぎ蒸しや鍼灸などで、冷え性を改善したことにより、「体調が良くなった」という患者さんは少なくありません。

ウォーキングなどの軽い運動は、不妊に限ったことではなく体に良いのは確か。

ピンポイントで卵巣や子宮の機能だけを高めることはできませんが、健康体になれば妊娠力も並行して高まることと思います。

ご自身が「心地よい」と感じられることは、気分転換やストレス解消にもなりますから、上手に取り入れるといいでしょう。

ただし、「やらなくてはならない」と思うと、かえってストレスになるので要注意!あれも、これも、と神経質になりすぎるのは良くないと思います。

秋山先生 不妊治療をしている間は妊娠しなかったのに、「しばらくお休みします」と治療を中断したとたんに妊娠される方って、結構多いんですよ。

きっと、不妊治療そのものが大きなストレスになっていたのでしょう。

男女ともに言えることですが、ストレスは万病のもとですね。

柏崎先生 あるアンケートによると、不妊治療中は決まった日しかセックスしないというカップルがほとんどとか。

人工授精や体外受精をされるカップルでは、完全なセックスレスになることも多い。

ちょっと休んで、ご夫婦で旅行にでも行って、そんな雰囲気で自然妊娠に至るというのは大いにあり得ることだと思いますよ。

秋山先生 セックスレスは、私も強く感じます。

極端な例になりますが、ご結婚後に一度も性交渉がなく、最初から「人工授精で」と依頼される患者さんがいて、驚いたことがあります。

そのカップルが不仲か、というとそういうわけでもなく、ご主人も積極的に付き添われたりして、不妊治療に前向きだったり。

EDといった男性側に問題があるならともかく、理解に苦しむこともありますね。

柏崎先生 性交渉がなければ、妊娠しないのは当然のこと。

夫婦共稼ぎでも「忙しいから」「疲れているから」は、セックスレスの理由ではないはず。

不妊治療のほうがもっと、時間的にも経済的にも大変で、労力が必要になります。

不妊治療に進む前に、夫婦が仲良くあるためにどうすべきかも、考えてみてはいかがでしょうか。

秋山先生 女性ばかりでなく、「将来、子どもが欲しい」と願う男性の意識も高める必要はあるでしょうね。

男女とも、晩婚化は今に始まったことではなく、今や 20 代の 女性のお産のほうが少ないぐらい。

男女雇用均等法による女性の社会進出や“草食系 男子 ”の増加など、社会的な問題も多くて、 不妊治療医がどうこうできる範疇を超えているところも多々あります。

あまり声高に言うとセクハラに該当してしまうかもしれませんが、それでも女性が妊娠できるのにはどうしても年齢的な制限がある、というのは知っておいてほしい。

社会的に認められたい、活躍したい、と頑張る女性ほど、結婚や妊娠を後回しにしがちになります。

若くして子どもを産んでも、大学や職場に復帰しやすいといった環境づくりも、社会として重要な課題だと思います。

「若いうちに安心して子どもが産める」という世の中であれば、不妊治療医の出番も少なくなるかもしれませんね。

柏崎先生 避妊のやり方は教わっても、より良い妊娠の仕方は教わらない。妊娠に適した年齢があることも、教科書は教えてくれません。

教育に不備があるのは確かですが、調べようと思えばいくらでも情報が得られる時代。情報は玉石混交ですが、惑わされることなく、ご自分に合った適切な懐妊スタイルを見出していただきたいと思います。

夫婦のあり方もさまざまですが、やはり夫婦仲良くあれば“コウノトリ”はきっ と来てくれるはず、と思いたいですね。

妊娠前に肥満を解消!まずは「肥満度」チェックを。

BM(I Body Mass Index) と は、1994 年 に WHOで定めた肥満判定の国際基準で、日本で も健康診断で使っています。

算出法として、体重 (kg) ÷( 身長(m) X 身長(m))=BMIの計算式 が用いられます。

例として、身長1.58m、体重 55㎏の女性のBMI値は、22(標準)となります。

BMIでは18.5未満を低体重、18.5以上25.0 未満を標準、25.0以上30.0未満を肥満(1度)、 30.0以上35.0未満を肥満(2度)、35.0以上 40.0未満を肥満(3度)、40.0以上を肥満(4 度)としています。

ただ、BMIの計算式は世界共 通ですが、判定基準は各国で異なり、日本での BMIの理想値は男性が22.0、女性が21.0です。

これらの数値に近いほど「統計的に病気にかかり にくい体型」と疫学調査で判明しています。

逆に 肥満を示す25.0を超えると、糖尿病、脳卒中、 心臓病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病に かかりやすいとされています。

近い将来に妊娠を 望むのであれば、目安としてBMI値18.5以上、 25未満の間で体重を保持したいものです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。