教 え て !不育症 のこと

妊娠しても流産を繰り返してしまう――。

「もしかしたら不育症?」と心配している方もいるのでは。

まだまだよく知られていない不育症について、 秋山レディースクリニックの秋山先生が丁寧に解説していきます。

秋山 芳晃 先生  東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大 学附属病院、国立大蔵病院に勤務後、父親が営 んでいた産科医院を継ぎ、不妊症・不育症診療 に特に力を入れたクリニックとして新たに開 業。O型・やぎ座。クリニックの改装が終わり、 4月2日にリニューアルオープン。エレベー ター完備、カウセリングルーム5室、お子さん 連れの方の待合室も4室に増設。ますます患 者さんにとって居心地の良い空間に生まれ変 わりました。

ここがPOINT!

● 検査でリスク因子が判明する人は4割弱

● 適切な治療で妊娠成功率が上がることも

● 予防のためには妊娠前から健診、婦人科検診を

全体の6割以上は原因不明。 未知の部分も多い病気です

今回は、どのような人が不育症になりやすいのか、もしそのリスクを持っていたらどんな治療法があるのか、ということをお話ししていきたいと思います。

不育症のリスク因子は、厚生労働省の研究班がまとめた円グラフをご参照ください。

もっとも多いのが原因不明。

この中には記述されているPE抗体陽性のほか、糖尿病や高プロラクチン血症なども含まれると思いますが、全体の6割以上を占めています。

あとは子宮形態の異常や甲状腺異常、抗リン脂質抗体陽性など、いくつかの因子が指摘されています。

リスク別頻度とは、不育症の人を調べた結果、このような頻度で異常が見つかったという意味。

逆にいうと、こういう異常があると不育症になりやすいのではないかということです。

皆さんが知りたいのは、この異常を放っておいた時にどれくらいうまくいかないか、治療をするとどの程度改善するかということだと思うんですね。

まだはっきりと効果が検証されていないものもありますが、現状行われている対処法をリスク因子別にご紹介していきたいと思います。

リスク因子に対する 対処方法やその効果は?

①子宮の形の異常

子宮の奇形は流産の原因になるといわれていますが、子宮が2つに分かれてしまっている双角子宮に対しては、手術をしても妊娠成功率の改善は見られませんでした。

それに対し、子宮内に仕切りがあるような形態の中隔子宮では、手術をしたほうが 30 %近く成功率は高くなると いう報告があります。

②甲状腺の異常

一般的には甲状腺機能亢進症より、甲状腺機能低下症のほうが妊娠しづらく、流産しやすいといわれています。

もし検査で甲状腺に異常が見つかったら、内科医のもとで適切な診断・治療を受け、薬剤でうまくコントロールしていけば大きな問題はありません。

③ご夫婦の染色体の異常

染色体異常そのものに対する治療はありませんが、異常があったとしても累積生児獲得率(最終的に赤ちゃんを出産できる可能性)は決して低くありません。

体外受精を行って着床前診断を受ける選択もありますが、現状ではこの診断を受けても、自然妊娠より生児獲得率が高くなるという証拠は出ていません。

④抗リン脂質抗体症候群

抗リン脂質抗体に当てはまるのが、グラフにも記載してある4種類の抗体。

これらの抗体があると、血液が固まりやすくなると考えられています。

2回以上の流産があり、一定期間を経て再検査を行って陽性であれば、血液を固まりにくくする低用量アスピリン療法とヘパリンの併用療法で約 80 %の生児獲 得率が期待できます。

再検査で陰性であればヘパリン投与の適応はありませんが、低用量アスピリンの投与は行ったほうがいいかもしれません。

⑤血液を固める働きの異常

プロテインS・プロテインC・第Ⅻ因子といった血液の凝固を抑える因子の活動が鈍ったり、量が少なくなって血栓ができやすくなる状態です。

まだ明確なデータはありませんが、まず低用量アスピリン療法を行うのが一般的でしょう。

状況に応じて、低用量アスピリンとヘパリンの併用療法を行うこともあります。

⑥PE抗体陽性

PE抗体は、ここ 15 年くらいの間に発 見された新しい抗体。

抗リン脂質抗体の一種で、持っていると血小板が固まりすぎてしまうと考えられています。

不育症の方に比較的高い確率で見つかりますが、流産との因果関係はまだはっきりと証明されていません。

しかし血が固まりやすいと、初期流産を引き起こしたり、中期以降に血流が悪くなって胎盤が育たず、赤ちゃんが小さくなったり、お母さんが高血圧になってしまう危険もあります。

現状では低用量アスピリン療法を行うのが一般的ですが、さらにヘパリン療法も併用すると成功率が上がったという報告もあります。

⑦その他・高プロラクチン血症

不育症との関連性は明らかにされていませんが、高プロラクチン血症の患者さんにプロラクチンを下げる薬を投与したほうが流産率は低かったという報告もあるので、高プロラクチン血症に対する薬物療法は一般的だと思います。

万全な体調を 維持することが大切。 早めの健康診断や婦人科検診を

薬の副作用についてですが、血液を固まりにくくする治療で用いられるヘパリンは、以前はそれほどポピュラーに使われるものではありませんでした。

使い始めの頃は、血小板の数が減ってしまったり、傷などができた時に出血量が増えてしまうのではないかという副作用が危惧されましたが、実際にはヘパリンは体内に入っても半日経たずに消えていきますし、血小板の数が減少する人の割合も1000人に1人程度。

重篤な副作用はなく、自己注射で治療できるので、用いられるケースのハードルもずいぶんと下がってきたようです。

医師の指導に従って正しく使用すれば、大きな問題が起こることはないので、安心していただきたいと思います。

不育症の原因については、まだ解明されていないこともたくさんあります。

リスクをできるだけ減らすためには、普段からご自身の体に気を配り、健康に保つことがもっとも大切。

糖尿病や甲状腺異常、子宮奇形などの早期発見のために、妊娠前から健康診断や婦人科検診をきちんと受ける、膠原病や血液系の疾患をお持ちなら、妊娠前でも病院に相談する、なるべく早め(若いうち)の妊娠を考える、 10 週以降の流産が一度でもあ れば病院に相談する、などの対応が予防策になってくるかと思います。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。