情熱のカルテ~吉田淳先生

木場公園クリニック 吉田淳先生

不妊治療に携わることになった理由や それにかける想いなどをお聞きし、 ドクターの歴史と情熱を紐解きます。

不妊症は夫婦の問題。 女性不妊、男性不妊 一緒に治療ができれば、 妊娠率は高まると信じて

〝出会い運”が導いた 生殖医療専門医への道

──吉田先生は、生殖医療専門医としてクリニックを立ち上げる以前は、産婦人科医だったそうですね。

吉田先生 「はい。お産は感動的で、命が誕生する瞬間にぜひ立ち会いたいと、産婦人科を選びました。

医大を卒業しても大学の医局には残らず、すぐに市中病院の産婦人科医となりました。

当時としては異例でしたが、とにかく臨床の技術を早く身につけたかったし、できるだけ多くの患者さんを診たかった。

人と話すのが大好きですし、研究論文を書くより、患者さんと接するほうが楽しかったんです」

──産婦人科医としてのご経験を積みながら、さらに泌尿器科をも学び、「男性不妊と染色体異常」のご研究で平成9年に医学博士号を取得されました。

吉田先生 「運がよかったのでしょう、〝出会い運〟が。

出会った先生方に、導いていただきました。

まずは、東京大学医学部附属病院にいらした矢野哲先生。

産婦人科医になって8年目頃だったでしょうか。

当時は先進医療だった体外受精・顕微授精のお話を矢野先生から伺い、それが生殖医療に興味を持つ大きなきっかけとなりました。

矢野先生の〝不妊症の治療は、常に頭を使って考えてしなければならない〟という言葉は、今でも私の座右の銘です。

永井クリニック(埼玉県三郷市)の永井泰先生には、高度不妊治療を学ばせていただいた中央クリニック(栃木県下野市)をご紹介いただき、また私に論文を書くようにすすめてくださった東邦大学医療センター大森病院泌尿器科にいらした三浦一陽先生もご紹介いただきました。

この先生方との出会いがなければ、今の私はないと言っていいでしょう」

女性不妊、男性不妊 どちらも診られる医師に

──なぜ、泌尿器科医の三浦先生を訪ねられたのですか。

吉田先生 「不妊治療は夫婦二人の問題であるのにもかかわらず、多くの場合、産婦人科医の立場からは奥様の顔しか見られません。

採取した精子を見ることはあっても、旦那様の顔が見えてこない。

また、女性は婦人科、男性は泌尿器科と、科が異なるのでうまく治療方針が定まらない。

そこにもどかしさを感じ、〝一人の医師が、ご夫婦双方を診ることができれば、妊娠率も高まるはず〟と考えたのです。

当初は、男性不妊治療の権威である三浦先生に2日間だけ教えを請うつもりでした。

でも私の〝やり始めたらとことんやらないと気が済まない!〟という性分なのでしょう(笑)、泌尿器科医になるまでに至りました」

──吉田先生のクリニックでは、男性患者さんも多く見受けられます。男性が来院しやすい工夫もされているのですか。

吉田先生 「特別なことはしていません。女性不妊、男性不妊のどちらも診る医師は珍しいからでしょう。

不妊は夫婦二人の問題ですから、夫婦で来院されるのが当たり前というのが当院の考え方で、土日ともなれば約半数が男性患者さんですし、男性お一人で来院される方も少なくありません。

しいていえば、男性不妊の患者さんのなかには事故などで脊髄を損傷して車イスを使用されている方もいらっしゃる
ので、施設内をバリアフリーにしたくらい。

また、これも当然のことですが、男女ともに多くの方が仕事をしながら不妊治療をされているので、子宮鏡下手術、精巣生検などはすべて日帰りで、負担が少ないように配慮しています」

生殖医療はチームワーク スタッフにもやり甲斐を

──心理カウンセラー、遺伝カウンセラーなど、心のケアをするスタッフも充実しています。また、〝ホルモンコーディネーター〟といった耳新しいスタッフもいますが。

吉田先生 「不妊治療において、心のケアは欠かせません。

〝子どもを産まなくては〟というプレッシャーがストレスとなって、妊娠に悪影響を及ぼすことも多いですから。

ホルモンコーディネーターは臨床検査技師で、周期によって複雑に変化するホルモンをチェックしてもらっています。

これまではエンブリオロジストが担当していましたが、よりきめ細かいデータを出してもらうために専門職としました。

当院の大学病院レベルの高品質な技術、世界最高レベルの妊娠率は誇りでもありますが、決して私だけの功績ではなく、すべてはこういったチームワークの賜物です。

当院を選んでくれた患者さんの期待に応えることができるのは、各スタッフがやり甲斐を持って働いてくれるからこそ。〝ES(従業員の満足)なくして、CS(顧客の満足)なし〟と考えています」

──国際学会にも多く参加されていますね。

吉田先生 「最新の治療や研究について常に勉強し続けることは、医師として当然です。

現状に満足せず、〝もっといい方法はないか〟〝どうしたら改善できるか〟と考えることは医師としての楽しみでもあり、ギラギラとした知識欲をいつも持ち続けていたいですね(笑)。

でも、知識や技術よりも、大切なのはやはり理念。絶対妊娠させてみせるぞ!  と〝一胚入魂〟の気持ちを込めて治療をしています」

──最後に、読者にメッセージを。

吉田先生 「せっかく赤ちゃんを授かっても、夫婦仲がぎくしゃくしていては本末転倒です。

だから、患者さんに口癖のように言っているのは、〝夫婦仲良く〟ということ。

治療中は、以前よりさらに会話も夫婦生活も増やしてほしいと思いますね。

不妊は夫婦の問題。どうか、二人の気持ちを一つにして治療してください」

 

吉田 淳 先生 愛媛大学医学部卒業。産婦人科・泌 尿器科医。生殖医療指導医・臨床遺 伝専門医。東京警察病院産婦人科、 池下レディースチャイルドクリニック、 東邦大学第一泌尿器科非常勤講師な どを経て、1999年木場公園クリニッ クを開院。不妊症治療の情報収集の ため、アメリカや日本国内の不妊症 専門施設の見学・研修を数多く積ん でいる。
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