【医師監修】松山 毅彦 先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大学付 属大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、 1996年厚仁病院産婦人科を開設。日本生殖医学会生殖医療専門医。 おひつじ座のA型。昨年も診療で多忙を極めていたそう。「もし休みが取 れたら旅に出たいですね。昔、夫婦で訪れた東南アジアや韓国に行きた いです。辛いエスニック料理を食べると元気になれるんですよ」と、先生。
クロさん(36歳)からの相談 Q.1人目を出産して以来、高血圧の治療をしています。現在は3種類の薬を服用し、血圧は 125~130/82~89㎜Hgに落ち着いています。また、仕事のストレスや不規則な生活、 肥満(156㎝/87㎏)が原因で子宮内膜症になりましたが、投薬治療を経て落ち着きま した。 そこで、そろそろ2人目をと医師に相談したところ、「血圧的には問題ないが、3種類も薬を 服用しているので妊娠は厳しいのでは。今の薬の代用薬もない」と言われてしまいました。 本当に代用薬はない? 私は重度の患者で、妊娠を諦めなくてはならないのでしょうか。
高血圧と妊娠
クロさんが妊娠できない原因は、高血圧の薬にあるのでしょうか。
松山先生 高血圧の薬そのものを原因に挙げるよりも、高血圧の体で妊娠することに問題があります。
一般的に、高血圧の人が妊娠すると合併症などにかかるリスクが非常に高くなります。
健康な人でも、妊娠中に血圧が上がって妊娠高血圧症候群になる場合があります。
出産後に血圧が戻ればいいのですが、高血圧の状態が続いてしまう人もいます。
そうなると、薬の服用などで高血圧治療を続けていかなければなりません。
クロさんの症状も、1人目の出産後からということですので、おそらくそれではないかと思います。
今は薬で血圧を抑えて正常値を保っていますが、薬がなければ高血圧に戻ってしまう。
そうなるとやはり、現状では妊娠・出産は危険だと思います。
妊娠期間中の服用
妊娠中でも服用できる薬を使うなどの方法は?
松山先生 妊娠中に服用できる薬はとても限られています。
クロさんの薬を見ると、アムロジピン ®2. 5、フルイトラン ®1 mg 、ミカルディス ®4 0。
それぞれの量はそれほど多くありません。
ただ3系統も服用している点が気になります。
ですから、薬を処方している医師 に相談しながら、薬を1系統からでも減らせるような血圧に戻していく努力が必要です。
薬に頼らない自立した生活を送り、まずは妊娠できる体づくりをしてください。
ストレスや不規則な生活、肥満は高血圧の要因です。
肥満と妊娠の関係性
肥満は妊娠高血圧症候群に関係しますか?
松山先生 肥満は生活習慣病です。
肥満の方でも、まれに検診結果を見ると健康な方がいますが、ほとんどの場合は血糖値や血圧など、何らかの数値に異常がみられます。
不妊要因にもなりますし、妊娠後も妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。
また、出産時に赤ちゃんが産道を通れないなどの理由でやむなく帝王切開となる場合もあります。
普段から妊婦さんには十分な体重管理をお願いしていますが、肥満はお母さんだけでなく赤ちゃんにとっても危険がともなう大きなファクターであることをぜひ知っていただきたい。
妊娠してから出産まで、当たり前のように平穏に過ごせると思われがちですが、実は赤ちゃんはいくつものリスクをかいくぐって生まれてきます。
妊娠がゴールではなく、母子ともに元気な出産を迎えることが目標なのです。
※妊娠高血圧症候群:妊娠中期から分娩後12週まで高血圧がみられる場合、または、高血圧に蛋白尿を伴う場合で、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものでないもの。重症化すると母子ともに大変危険な状 態に陥る。