不育症の検査の結果、同種免疫異常とのこと。リンパ球移植をするべき?

現在、賛否両論のあるリンパ球の移植について 醍醐渡辺クリニックの渡辺先生と、遺伝子医学博士の資格を持つ、 培養室主任の野々口先生に詳しくお聞きしました。

渡辺 浩彦 先生 滋賀医科大学卒業後、京都大学医学部附属病院 産婦人科、大津赤十字病院、済生会茨木病院な どを経て、1971年から不妊治療を行っている父親 の病院を継承。不妊治療から分娩まで手掛け、 365日24時間の診療体制をとる。O型・おとめ座。 最近、急性虫垂炎で腹腔鏡下虫垂切除術を受け、 「思いのほか痛かったです」と先生。患者さんの 気持ちを知る貴重な経験になったとか。初体験の 静脈麻酔はよく効いて、すぐに眠ってしまったそう。
ここあさん(36歳)Q.体外受精をしていますが、2 度の流産をしています。先日、不育症の検査をしま した。結果、血小板凝集能と同種免疫異常と言われました。キラー細胞は基準 範囲内でしたが、MLCは-22%でした。 リンパ球の移植をすすめられていますが、「賛否両論あるので自分で決めてもよ い」と言われたのでインターネットなどで調べてみると、-22%という数値でリ ンパ球移植をしている方を見かけません。できることは何でもしたいという気持ち はあるのですが、副作用なども気になり悩んでいます。アドバイスをお願いします。

同種免疫異常??

まず同種免疫異常の検査とは、どのような検査なのですか?
野々口先生 もともとMLC検査(リンパ球混合培養検査)とは、臓器移植の際にドナーと患者のリンパ球を混合培養して、移植後の拒絶反応や生着率について調べるためのものです。
夫婦間でよく似たHLA(ヒト白血球抗原)を持っていると、拒絶反応が出て流産の原因となることがあります。
不妊治療のMLC検査では、ご主人と奥さまのリンパ球を共培養して反応を調べます。
医師からリンパ球移植をすすめられているようですが。
野々口先生 MLC検査の基準値は22 %です。
検査結果が 22 %以上だと遮断抗体があり、陽性と判定されます。
とはいえ、近年はリンパ球移植の効果そのものが疑問視されています。
特にFDA(アメリカ食品医薬品局)が2002年に「臨床研究に限定して行うべき」という勧告を出してからは、世界的に実施数が減少する傾向になりました。
また、リンパ球を濃縮して接種するリンパ球移植では、輸血の副作用であるGVHDを発症する危険性があるため、日本では2010年、日本産科婦人科学会から、「接種するリンパ球には放射線照射を必須とする」という勧告がありました。
一方、近年アメリカで注目されているのが、免疫グロブリンを大量投与する治療です。
これは日本でも受けられますが、まだ大変高額な費用がかかります。

流産後の妊娠率

渡辺先生 これらの治療について、当院では2〜3回ほどの流産の方においてはおすすめしていません。
実際、もっと一般的なアスピリン、ヘパリン療法、柴苓湯の投与などが有効なケースも多いからです。
また、不育症治療について最新の治療、研究を行っている厚生労働省研究班によると、過去5回までの流産であれば、次回の妊娠成功率はおおむね良好という調査結果があります。
さらに、2〜3回の流産ですと、いずれも次回妊娠成功率は 80 %を超えています。
私が患者さんに注目してほしいのは、この流産回数と妊娠率の関係ですね。
野々口先生 たとえ2回でも流産が続くと悩む患者さんは多いと思います。
しかし、そのような方の不安を取り除いてあげるだけで、妊娠に至るようなケースも多いのです。
医師や遺伝カウンセラーを交えながら、ポジティブに治療をしていくことが大切だと思います。
渡辺先生 流産を3回、4回とくり返してご心配な場合は、ご夫婦の染色体検査を行ってみることをおすすめします。
そして、もしもリンパ球移植の治療を行う際は、リンパ球に放射線照射を行っている施設を選ぶことです。
また、自己免疫疾患のある方、感染症の方はリンパ球治療ができないので、その点にも注意してください。
※同種免疫異常:異物が体内に侵入すると、それを排除しようと免疫機構が働く。胎児も母体にとっては一種の異物だが、妊娠を維持するために同種免疫反応が働くので、母体にとって異物とみなされず、10 月10日体内で発達・成長し、誕生する。しかし、何らかの原因で特異抗体が生じてしまう反応が同種免疫異常。
※GVHD:移植片対宿主病の略称。移植した血液や骨髄中のリンパ球が、移植を受けた側を非 自己と認識して攻撃し、それによって生じるさまざまな症状を総称していう。通常、移植前に放射線を照射してリンパ球を不活化する処理がなされる。
野々口 耕介 先生 同院の培養室主任。遺伝子医学 博士、臨床エンブリオロジスト、 生殖補助医療胚培養士。質問内 容に、渡辺先生とともに真摯に お答えくださいました。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。