子宮筋腫と不妊症
子宮筋腫は妊娠に影響しますか?
田中先生 子宮筋腫は4〜5人に1人が持っているといわれ、不妊治療をきっかけに見つかることは多いです。
どのような治療方針を立てるかは、ケースバイケースになります。
子宮筋腫には、子宮の外側にできる漿膜下筋腫、子宮筋層の中にできる筋層内筋腫、内側に突出する粘膜下筋腫の3種類があり、不妊との因果関係が最も深いのは粘膜下筋腫といわれています。
これが見つかった場合にはほぼ100%治療を優先すべきです。
手術の必要性
他の場所にできた筋腫の場合は、治療しなくてもよい?
田中先生 漿膜下筋腫は卵巣が筋腫によって見えないなど、特別な場合を除けばあまり問題になりません。
筋層内筋腫が最も多いのですが、この場合は判断に迷うことも多く、患者さんにメリット、デメリットをお話しして治療の方針を決めます。
手術を優先すべきケースは、筋腫が相当大きくなっていて、着床すべき子宮内腔が変形してしまっている場合。
このまま妊娠しても流産の可能性が高く、妊娠経過が厳しくなると予測されるケースです。
一つの目安として、5㎝以上の場合は手術を考えたほうがいいですね。
手術の方法
手術はどんな方法で行いますか?
田中先生 粘膜下筋腫の手術はお腹を切ったり穴をあけたりせず、腟のほうからカメラを使ってアプローチする、子宮鏡下子宮筋腫切除という方法があります。
これは手術時間が15 〜 30 分で、痛みも少なく、日帰りでできます。
当院でも1日5〜6件行っている手術です。
手術後、生理が戻れば、すぐ妊娠可能です。
ただし大きさによっては、子宮鏡を使えない場合もあります。
一般的には5㎝以下なら可能だと思います。
筋層内筋腫の場合は、開腹手術というケースが多いと思いますが、当院では腹腔鏡を使って日帰り手術をします。
腹腔鏡の場合、体への負担が少ないということに加え、お腹を洗浄することになるので、妊娠率が上がるというメリットもあります。
手術のデメリット
手術をした場合のデメリットはありますか?
田中先生 筋層内筋腫手術のデメリットは2つあります。
1つは、子宮を縫った傷が癒えるまで、数カ月間妊娠できないので、その間の不妊治療が少し滞ります。
もう1つは妊娠して分娩をする際に、帝王切開を選択されがちだということ。
理由は、子宮の縫合部が弱くなり、分娩時に子宮の破裂を起こす可能性があるからです。
年齢や状況によって判断
採卵を優先したほうがいい場合もありますか?
田中先生 手術までの順番待ちや、術後数カ月間妊娠できないことを考え、先に採卵することがあります。
受精卵にして凍結しておき、術後、子宮の状態を整えてから移植するという方法です。
患者さんの年齢や状況により決めますが、当院ではよく行うケースです。