実施するクリニックによって 使用する造影剤などが異なる子宮卵管造影検査。 それぞれの特徴を、雀部先生に教えていただきました。
【医師監修】雀部 豊 先生 東邦大学医学部、同大学大学院医学研究科修了、医学博士。1994 年アメリカへ留学し、高度生殖医療を研究後、東邦大学医学部第1 産婦人科、東京都立荏原病院産婦人科勤務を経て、2002年より幸町産婦人科に勤務。現在は副院長を務める。A型・てんびん座。「な るべく体に負担をかけずに妊娠していただきたい」という信念を持つ 雀部先生。リスクを伴う検査は十分検討したうえで行っている。
こねこさん(会社員・34歳)からの投稿 Q.先日、子宮卵管造影検査を受けました。造影剤を入れて 1時間後にレントゲンを撮りましたが、 痛みにより院内で休んでいたため、造影剤がうまく拡散しませんでした。 診断は癒着の可能性あり、年齢を考えると半年ほどタイミングをとり、 ダメだったら体外受精を、とのこと。 造影剤の拡散ありなしは1時間程度での判断が一般的なのでしょうか。 1日後に撮影するケースもあるようですが、結果が異なることはありますか?
造影剤の種類と時間
こねこさんは造影剤を入れた後、1時間程度でレントゲン撮影をされたということですが、これは一般的なのでしょうか?
雀部先生 時間はクリニックによって多少異なると思いますが、当院では造影剤を入れて 15 分後くらいに撮影をしています。その間、休んでいるよりは歩き回っていただいたほうが、より腹腔内に造影剤が拡散しやすいとは思いますが、時間の差や動きにそれほど左右されることなく、十分拡散されると思います。
当日に撮影する方法以外に、翌日撮影する方法もあるようですが……。
雀部先生 子宮卵管造影検査の造影剤には、水溶性と油性の2種類があります。
こねこさんが受けられた1日で撮影が終わるものは水溶性。油性の造影剤を使った検査の場合は、通常 24 時間後に撮影をします。
それぞれのメリット・デメリット
どちらがよい、結果が異なる、ということはありますか?
雀部先生 どちらもメリット・デメリットがあり、水溶性を使うか油性を使うかは、ドクターの考え方や好みにもよると思います。
水溶性は1日で撮影が済みますが、油性に比べると解像度が少し低い。
油性は解像度が高く、水溶性より粘度があるために卵管をきれいにお掃除してくれる治療的な効果もあります。
検査後の妊娠率も水溶性より高いと言われています。
ただし、その粘度のために、閉塞している場合は卵管に長期間残ることがあるんですね。非常にまれですが、 ※ 異物肉芽腫やオイル塞栓 などのリスクも知られています。
また、造影剤自体の価格も異なり、水溶性は油性の約 10 倍。検査費用も異なってくると思います。
卵管癒着発見の可能性
そのような子宮卵管造影検査により、卵管の癒着などの状態は正確に判断できるものなのでしょうか。
雀部先生 子宮卵管造影検査は、やはり造影剤の影を見ているだけなので、100%信用するわけにはいかないんですね。
癒着の程度や場所を正確に判断するためには、腹腔鏡などで直接病変をみる必要があります。
こねこさんも「可能性がある」ということで、絶対ではないと思います。
今後の治療方針としては、腹腔鏡検査の検討のほか、担当医の先生がおっしゃるようにタイミングにトライした後に、体外受精、という選択肢も考えられるのではないでしょうか。