【医師監修】藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。米国留学、同大学医 学部婦人科学教室講師を経て、1997年にクリニッ クを開業。現在、同大学で非常勤講師も務める。 毎朝5時に起床して日の出を眺めるのが習慣とい う超健康的な先生は、鷹揚でちょっぴりお茶目な ところがあるB型・おとめ座。穏やかな人柄で多く の患者さんやスタッフから信頼されている。
女王さん 36歳 Q. 私の子宮筋腫を切除し「さぁこれから……」 と思った矢先、主人に胃がんが見つかりました。 現在は抗がん剤で治療中。 私たちは再婚夫婦で、主人は私より12歳年上です。 どうしても私たち二人の赤ちゃんが欲しいのに、 授かるどころか挑戦さえままなりません……。
抗がん剤と不妊治療
ご主人が胃がんで、抗がん剤を服用中とのこと。やはり不妊治療は難しいのでしょうか? 先生ならどのような治療方針になりますか?
藤野先生 抗がん剤の中には、女性が妊娠中に飲めば胎児に奇形を生じさせる催奇性のものがあります。人工授精や体外受精を行う場合、3ヶ月の猶予を持ってほしいですね。このケースはご主人の場合ですが、早い段階に精子を採取して凍結保存しておくのがいいでしょう。
ただ、妊娠率からいって一番よいのは、まず、奥様の受精卵を凍結保存しておいて、ご主人の治療が一段落したら不妊治療を再開する方法です。もう一つの選択肢は、精子だけを採取して先に凍結保存。その精子を使って人工授精や体外受精を行うという方法です。
子宮の状態は変化する?
女王さん自身も、子宮筋腫を切除されたばかり。「筋腫さえなくなれば、すぐにでも授かると思っていたのに」と、ショックを隠しきれない様子です。
藤野先生 そうですね。資料を見ると、女王さんは前の結婚で出産されていますが、気になるのは、上のお子さんを出産されたときと、子宮の状況が少し変わっているかもしれないということ。
筋腫の大きさや、できる場所にもよるんですが、たとえば、子宮筋腫が大きくて手術の後の癒着が起こっていれば、卵管の機能が不十分で自然妊娠は厳しいかもしれません。それなら、先に卵子を取って受精卵にしておいて、ご夫婦が落ち着いたときに体外受精をするほうが近道かもしれませんね。
ご主人の薬の影響、ご本人の年齢の影響、どちらもクリアできますので。
高度生殖医療の活用
受精卵や精子の凍結保存、人工授精や体外受精といった高度な治療にも挑戦すべきということですね。
藤野先生 私も以前、ご主人が白血病のご夫婦を診たことがありますが、何より大切なのはご主人の、不妊治療や、子どもをお持ちになることに対する積極的なモチベーション。奥様だけでなく、ご主人も直接医師と十分話して、納得いただいてからの治療再開が望ましいですね。