【Q&A】どうすればよかったのか。~重富先生

星屑さん (36歳)
36歳です。一年前に自然妊娠後、稽留流産。吸引にて処置。再度自然妊娠(検査薬陽性)化学流産の診断。
クリニック受診、1月から体外受精開始。不育症を勝手に疑って希望して検査は問題なし(遺伝子以外)。
妊娠流してるから不妊検査は不要でしょう、とのことで治療するなら体外受精と言われて開始。移植前にできることはと思い、子宮鏡検査を希望して、結果両側卵管閉塞?閉塞気味。自然妊娠してるから大丈夫かな。CD138はしましょう。
と。今更ですが、本当に不妊検査全て飛ばしてきてよかったのか。今からでも受けるべきか悩んでいます。一人目不妊、生児を得られるなら2人目もと。その場合、早く1人目と思っていますが、通水検査または卵管造影検査、形成術など行っておく方が将来のためにも良いのでしょうか。そもそも流産の原因が内膜炎や卵管閉塞の可能性はあるのでしょうか。それとも流産を契機に、慢性内膜炎、卵管閉塞となったのでしょうか。
年齢もあり急ぎたいところですが、自分の体に自信がありません。トリオ検査の希望もしようか考えていますが、いつするべきなのか、不妊検査を先にするべきなのか。
諸々どうすればいいか悩んでいます。アドバイスいただけると幸いです。

重富先生に聞いてみました。

ASKAレディースクリニック 副院長 重富洋志 先生 2003年、奈良県立医科大学卒業。星ヶ丘厚生年金病院、奈良県立医科大学で産婦人科医の経験を重ね、2017年よりASKAレディースクリニックの副院長として従事。患者様が納得して治療を進めてもらえるような診療がモットー。患者様の生活スタイルに合わせた診療を行い、土日祝だけでなく、夜は20時まで受付時間を設けている。生殖医療専門医、日本産科婦人科学会専門医。趣味はマラソン。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

Q.流産のリスク因子がわかる一般的な不妊検査はどんなものがあるでしょうか?

流産の原因は、胎児の染色体異常に起因するものがほとんどです。しかし、繰り返す場合は不育症として原因検索を行います。原因としては、抗リン脂質抗体症候群、プロテインSなどの血栓傾向、甲状腺異常、ご夫婦の染色体異常、子宮奇形、子宮内膜炎など多岐にわたり、原因不明も多いです。

不育症の検査は問題なかったとのことですね。

一般的な不妊症の検査には、卵管造影検査、採血検査、精液検査、子宮超音波検査、子宮頸管粘液検査などがあります。これらの一般的な不妊検査のなかで流産のリスク因子がわかるものは、甲状腺疾患を調べるホルモン検査や子宮奇形を調べる超音波検査が考えられます。質問内容から、子宮鏡検査が施行されているため子宮奇形・内膜ポリープは否定されているのではないでしょうか。甲状腺ホルモンの検査についてはご自身の採血の項目を確認ください。

ご相談内容からは流産のリスク因子の検索のためには、新たな“不妊”検査は必要ないと思われます。

Q.今後の不妊治療や流産予防のためにも、今のうちに詳しい不妊検査を行うべきだと思われますか?

今後の不妊治療(体外受精)や流産予防のための詳しい検査について、患者様がご指摘の通りにトリオ検査(ERA・EMMA・ALICE)は考えられます。

体外受精は卵管の通過性を必要としないため、子宮卵管造影検査は必須ではありません。ただ、卵管水腫が存在する場合は着床の障害となるため、水腫の有無の確認に子宮卵管造影検査を行うことがあります。卵管水腫の着床障害の機序としては、卵管内に貯留する液体の子宮内への流入が考えられています。卵管が子宮側で閉塞している場合は、流入の可能性は少なくなります。患者様のケースでは子宮検査にて卵管閉塞?とのことなので水腫があっても流入しない可能性があります。そのため子宮卵管造影検査の必要性は低いかもしれません。

Q.体外受精を通して早く1人目を、と考える場合、卵管鏡下卵管形成術は必要ですか?

体外受精では卵管の通過性は必須ではありません。そのため卵管鏡下卵管形成術は必要ないと考えます。

Q.胚移植を成功させるために行っておくべき検査や治療はありますか?

胚移植を成功させるためのさらなる検査としては、上記のようにトリオ検査(ERA・EMMA・ALICE)は考慮できます。そのほかに、免疫など様々な報告がありますが、まだ一般的ではなく保険適応もありません。現在、保険で治療されている場合は混合診療となるため追加の自費検査は難しく、施行する場合は注意が必要です。主治医とご相談ください。

胚移植の成否は主に受精卵に依存します。そのために妊娠率を上げる最も効果的な因子は“移植回数”です。様々な検査を行うよりは、移植を繰り返すことの方が重要となります。

質問者様の質問内容を要約させていただくと、

・臨床的流産1回、生化学的妊娠1回
・不育症検査は異常なし
・一般不妊治療せずに体外受精開始。
・ご不安な点

不妊症の検査、特に子宮卵管造影検査を行っていないこと

→体外受精において子宮卵管造影検査は必須ではありません。また水腫については子宮鏡検査の結果から積極的に疑う状況ではないと思われます。必要性について主治医とご相談ください。

→二人目について自然妊娠をご希望の場合は、子宮鏡で両側卵管閉塞?とのことですので、子宮卵管造影検査で卵管の通過性を確認し、閉塞なら卵管鏡下卵管形成術も考慮されます。ただし、繰り返しになりますが、二人目も胚移植での妊娠をお考えでしたら、子宮卵管造影検査、卵管鏡下卵管形成術は必須ではありません。

流産の原因について

内膜炎が流産の原因となることはあります。その精査は、CD 138やトリオ検査で行います。卵管閉塞が流産の原因とはなりません。流産を契機に慢性子宮内膜炎、卵管閉塞となったかは不明です。

まとめますと、追加の検査として、トリオ検査は考慮できます。
その他に体外受精、流産予防について積極的にお勧めする検査はありません。
移植を繰り返すことも重要な治療の一つです。
ご質問内容だけでは状況が詳しくわからないため、一般的な説明となっていることをご容赦ください。

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