卵胞の大きさが揃いません。排卵誘発の仕方に問題があったのでしょうか【医師監修】

体外受精で排卵誘発したところ、卵胞の大きさにばらつきが。 その原因は排卵誘発の方法にあるのでしょうか。 クリニックママの古井憲司先生にお話を伺いました。

【医師監修】古井 憲司 先生 1986 年日本医科大学卒業。1年間の研 修医を経て、1987年名古屋大学産婦人 科学教室入局。名古屋大学産婦人科で は文部教官を務める。さらにその後、大 垣市民病院産婦人科医長を経て、1998 年クリニックママを開院。A 型・やぎ座。 最近は趣味のゴルフにもなかなか行けな いというご多忙の中、ダイエットに成功。 クリニックや患者さんに対する真摯な想 い同様、自己管理も徹底した姿勢で取り 組まれているようです。

ドクターアドバイス

◎ 排卵誘発を始める前の状態を見極めること
◎ hCGに切り替えるタイミングが肝心
◎ いろいろな排卵誘発法を試すことも必要
ティーさん(専業主婦・40歳)Q.初めての採卵に向けて、アンタゴニスト法で排卵誘発をしています。 9日目の内診で10 個ほど卵胞があり、2 個の卵胞が異常に大きく(25 ㎜と22㎜)、他は16㎜前後と言われました。25㎜が主席卵胞だと 思われますが、医師には「この大きさでは空胞になるでしょう」と言 われました。主席卵胞でも卵子の質がいいとは限らないのでしょう か? また大きさが揃わないのは、排卵誘発の仕方に問題があった のでしょうか?

誘発前のセットアップが大事

ミルクティーさんは、卵胞の大きさが不揃いであること、 25 ㎜もの大きな卵胞があることに不安を抱いているようですが。
古井先生 卵胞が1個 25 ㎜というのは大きすぎますね。
大きさが不揃いということもそうですが、まず 25 ㎜まで育ってしまうような排卵誘発をしていることが問題だと思います。
排卵誘発は月経の3日目か4日目から始めますが、その時の前胞状卵胞の大きさがある程度揃っているかどうかということが大切です。
そのためには、排卵誘発を始める前の卵巣の状態を整えておくことが大事なんですよ。
この時に、すでにもう育ち始めている卵胞があると、それが排卵誘発と同時に1〜2個、早く大きくなってしまうのです。
ですから、そうならないように最初にセットアップしておくことが必要です。
当院では、排卵誘発を始める前に、必ずホルモン剤で人工的な月経(消退出血)をつくって、その3日目頃から排卵誘発を始めるケースが多いです。
そうすることで、排卵誘発直前の卵巣の状態を整えることができます。
主席卵胞でも卵子の質がいいとは限らないわけですね。
古井先生 はい、必ずしもいい卵子とは限りません。
ミルクティーさんの場合のように、主席卵胞が 25 ㎜もあると、担当の先生がおっしゃるように空胞になったり、私の経験上でも、大きく育ちすぎると採卵しても卵子が採れないことが多いです。

確認と臨機応変さ

排卵誘発の仕方に問題があったわけではないということでしょうか?
古井先生 排卵誘発の方法によって卵胞の大きさに不揃いが出るか出ないかは、私はあまり関係ないと思います。
それより、排卵誘発を始める直前の卵巣の状態を医師がきちんと見極めたかどうか、ということが重要だと思います。
ミルクティーさんの担当の先生も確認していると思いますが、必ず月経中にエコーを見て、前胞状卵胞の数などをチェックすることが必要です。
他の卵胞は 16 ㎜前後ということですが、これはどうでしょう?
古井先生  20 ㎜くらいの卵胞が均等に5〜 10 個ほど育つのが一番きれいな排卵誘発だと思いますが、 16 ㎜でもいい卵子が採れる可能性もあると思います。
それよりやはり、 25 ㎜の卵胞があるということが問題ですね。
22 ㎜くらいで止めておかないと。
僕の選択肢としては、 20 ㎜が3個くらいで 16 ㎜が3〜4個あったとしたら、もう1日待ちます。
卵胞はだいたい1日2㎜くらいのペースで大きくなるということを、読者の皆さんも覚えておいてください。
1日経つと 20 ㎜の卵胞が 22 ㎜になり、 16 ㎜が 18 ㎜になります。
そこで、HCGを注射するなり、スプレキュアⓇを点鼻するなりして排卵誘発を起こし、そこから 36 時間後に採卵するというのがベストな選択だと思います。
また、排卵誘発の切り替えタイミングも重要ですね。
10 ㎜以下の卵胞では未熟卵が多いけれど、 16 ㎜くらいになると成熟卵の場合も結構あるんですよ。
やはり、ある程度の大きさの卵胞が1個できていたら、それでhCGに切り替えるべきだと思います。

自分に合った誘発法を

ミルクティーさんはアンタゴニストで排卵を抑えているそうですが、「 16 ㎜の卵胞が大きくなる頃、 25 ㎜の主席卵胞はどうなるのでしょうか?」とのことですが。
古井先生 もちろん自然に排卵するけれど、いい卵子かどうかはわかりません。
アンタゴニストで排卵を抑えているからどこまでも引っ張っていいかというと、それは間違っています。
アンタゴニストを使用していても排卵してしまうケースはあります。
アンタゴニスト法がすべてではないので、いろいろな方法を試してみればいいと思う。
排卵誘発にはいろいろな方法がありますから、自分に何が合っているかを試してもらえる病院を選択するのがいいかと思います。

高年齢=難しい。ではない

40 代で治療をされている方に、アドバイスをお願いします。
古井先生 先日、ある新聞に依頼されてコラムにも書いたのですが(★クリニックママのホームページで閲覧できます)、一般的に、卵巣機能は 35 歳頃から低下して、 37 歳頃から急激に悪くなります。
ただ、それは人それぞれで、 40 歳でも卵巣機能がいい方もいます。
僕が今感じているのは、同じ 40 歳でも、いろいろな病院を巡って何回も体外受精をしている方は、やはり難しい状況だということです。
そういう患者さんには、科学的にきちんとご説明をして、「残念ですが、非常に厳しいです」と告げることも、医師の役目だと思います。
基本的には、きちんと治療を行っている施設であれば、どこも技術レベルはそれほど差はないと思うのです。
同じ 40 歳の方でも、初めて来院したという方は妊娠できる可能性が十分あると思いますし、 40 歳だから難しいというわけではありません。
当院でも、 40 歳以上で初診に来られた方でも、結構な確率で妊娠されていますし、今年になってからも 44 歳で妊娠した例もあります。
40 代の方も、希望を持って治療に取り組んでほしいと思います。
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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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